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世界に迎えられた日

「おつかれ〜マオはもう配信終わってたんだね」


雑談配信を終えたユウがリビングに向かうと、既に配信を終えたらしいマオが一杯やっている最中であった。


「うむ、少し前に終わってのう……ふむ?

何やら嬉しそうに見えるが、どうしたのじゃ」


マオと向かい合うようにして座ったユウは、心なしか楽しそうな表情をしている。


「いや〜さっきの雑談なんだけど、今年はいつもより気温が低くて過ごしやすいねって話をしたんだよ」


「確かに過ごしやすいのう。

それが嬉しそうにしている理由……と言うわけでは無さそうじゃが」


「そりゃ、気温なんていざとなったら耐性でどうにでもなるからね。

そうじゃなくって……いつもよりって言葉が自然と出てきたのが嬉しくなっちゃって」


ユウの言葉にマオはポンっと手を叩いた。


「確かにのう。

いつもより……そんな言葉が自然と出てくるくらいに、妾達はこの世界に馴染んだと言う事じゃな」


「なんか……良いよね。

僕たちもようやくこの世界の住人になれたって気分がするよ」


「ふむふむ……そう言うめでたい日であるならば秘蔵のこれを出すかのう」


そう言ってマオが何処からか取り出したのは3種類の焼酎であった。


「これって……よく分からないけど、ものすごく高くて有名な焼酎じゃないの?」


「其々の頭文字がMから始まることから、薩摩の3Mと呼ばれる代物よな。

これだけで数万の価値があるのじゃ」


「これどうしたの?」


「妾の酒好きを知ってリスナーが飲み比べセットを送ってくれたのじゃな。

因みに魔王だけなら妾にピッタリということで、他にも数本送られてきておるぞ」


マオはそう言いながら更に数本の魔王をテーブルに並べた。


「食べさせてもらってるだけじゃなくて、こんな高級品まで贈ってくれるなんて……リスナーさん達に足向けて寝られないじゃん」


「全国各地におるのじゃから、それは無理な相談じゃろ。

それをやるのであれば立って寝るか、逆立ちして寝るしか無かろう」


「それはキツイなぁ……まぁ、感謝の心は忘れないようにしないとね」


「そうじゃな。

と言うわけで、このようなめでたい日じゃから付き合うてくれるよな?」


そう言いながらマオは既にユウの分のグラスを用意していた。


「仕方ないなぁ……僕は飲んでも変わらないんだから、そんなに楽しくないでしょ?」


「そんな事はないぞ。

好きな者と心ゆくまで酒を酌み交わす……人生において、これ程幸せな事はそうはあるまいて」


「ふーん……そう言う事なら今日は付き合ってあげるよ。

僕も好きな人と飲むのは嬉しい事だしね。

その人が秘蔵のお酒振る舞うってなら尚更だよ」


「うむうむ……それでは……何がいいかのう?」


「普通に2人の未来にで良いんじゃない?」


「そうじゃな……2人の未来に」


「2人の未来に」


そうして2人はお互いのグラスを持ち上げ……


『乾杯』


と言って軽くぶつけてから飲み干した。


「あ、これすごく飲みやすいね」


「うむ、流石という味じゃな」


こうして今日という記念日に存分に酒を酌み交わす2人であった。


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