叶わない初恋
「やっほ〜来たよ〜」
「お邪魔するのじゃ」
2人がルーナに頼んで転移させてやってきたのは、懐かしの福岡……巫女の神社である。
「お二人ともいらっしゃいませ。
今日は骨董品の見学ということでよろしいでしょうか?」
「うん、大丈夫だよ」
「中々の年代物が出てくると聞いてのう」
先日のユウの配信を観ていた巫女が、時間があればフロッピーディスク関連の古いパソコンがあるので見に来ませんかと誘ったのがきっかけであった。
それは面白そうだと便乗したのがマオであり、交通手段としてルーナに転移を頼んでやってきたのであった。
「それではこちらの方へ。
蔵の一つを私の趣味に使わせてもらっております」
そう言って先頭を歩く巫女の姿は正に清楚そのものである。
しかし、向かう先が己の趣味……アダルトゲームの保管庫として使っている辺り、毎度の事ながら清楚詐欺も良いところであった。
「うーむ、今日も清楚詐欺が絶好調じゃな」
「以前ルーナから聞いたんだけど、この辺りに住む男の子の初恋はほぼ全てが巫女さんらしいよ。
朝と夕方に降りて巫女服で竹箒を持って清掃するんだって。
それで、学校の行き帰りに笑顔で挨拶するらしいよ……認めたくはないけど、そりゃ恋しちゃうよ」
「しかし、本人は生身の人間に興味がない。
寧ろ男の子達は男の子同士で仲良くして欲しいから告白されても断ると言うのは読めるのう」
「それで、その子の仲の良い友達に慰めてあげてって声をかけるらしいんだよね。
それて深まった友情見てニヤニヤしてるんだとか」
「断る理由は巫女を理由にじゃろうな。
それでリカバリーも完璧に見える事をすれば高嶺の花すぎて近寄る者もいなくなるじゃろうな」
「ボソボソと話していても聞こえていますからね。
私は誠意を持ってお断りして、その子が早く立ち直れるようにと動いていただけですよ」
先を歩いていた巫女が急に立ち止まって振り返り、2人に答える。
「本当に下心が無かったんなら、清楚だと認めて謝るけど……本当に無かったの?」
「いや、それは……辛い事を共有して友情が深まったのは良い事だと思いましたよ」
「では、友情の深まった2人を見てもニヤニヤしておらぬな?
母や姉のような温かい眼差しじゃったのじゃろうな?」
必死に抵抗していた巫女ではあるが、ここで視線を逸らして黙り込んだ。
「高嶺の花なのは間違い無いけど……」
「根本は腐ってたわけじゃな」
「ショタBLを妄想するくらいいいでしょう!
手は出していないのですから。
さ、着きましたよ」




