倦怠期を乗り越えて
「あっつ……いつの間にか寝てたんだ。
マオもそれは同じか。
ほら、マオも起きて!」
ユウが隣で眠るマオを揺さぶり起こす。
「む……ふあーあ。
いつの間にか眠っておったんじゃな」
「時間としては20分ぐらいだけど……また汗だらけだね」
「そうじゃのう。
一旦、中に入ってシャワーを浴びて汗を落とすとするかの」
「そうだねぇ……喉も渇いちゃったし、汗ながしたら一回出よっか。
お風呂はまた後で入りに来たらいいし、食事して、食休みに本でも読むに行こう」
「うむ、賛成じゃな」
こうして2人は汗を流してから館内着に着替えて、食事場に向かう。
「僕は天蕎麦にしようかなぁ……マオは?」
「妾も天蕎麦にしようかのう。
この暑い季節はざるに乗っておる蕎麦がやたらと美味そうに見えるのじゃ」
こうして2人は仲良く天蕎麦を注文し、天麩羅と蕎麦を楽しむ。
最後には蕎麦湯まで堪能して大満足な2人は続けて休憩室に向かった。
「今日読む漫画は決めてるんだよね」
「何を読むのじゃ?」
「昔話をモチーフにしたレスラー達がプロレスする漫画。
ギャグと真剣勝負の比率が堪んないんだよね」
「中々面白そうじゃのう」
「あ、じゃあマオも読む?
僕は4巻からだから一緒に読めると思うよ」
こうして2人は目当ての漫画全10巻を持って休憩スペースへとやってきた。
「これは……ふむふむ……金太郎がハゲ頭を利用してカポエラキックを出してくるとは……中々に面白いのう」
「ここまで読んできても桃太郎が変身する生き物が謎すぎて分からない」
「ベンケイは強すぎてはおらぬか?
いや、しかし……彼の者の武勇伝を聞けば納得なのかも知れぬ」
「浦島が強いのも意外だよね。
竜宮城がかつてのムー大陸で、浦島の子孫はその王子ってのは今でも通用しそうな設定だよ」
2人でやいのやいのと言いながら、あっという間に全話読み終える。
「こういう超人レスリングといえば筋肉の方が有名じゃが、これはこれで面白いのう」
「でしょ〜結構よく出来てるんだよね。
真面目なシーンに唐突にギャグを入れるのはこの時代ならではって感じもするね」
「確かにそうじゃのう。
さて、もうそろそろ良い時間じゃし、最後に風呂に入ってから帰るとするか」
「さんせーい!」
こうして再びのお風呂を堪能した2人はSPAを後にして送迎のバスへと乗り込んだ。
日は完全に沈み、火照った身体を優しく風が撫でていって気持ちが良い。
帰りのバスで並んで座る2人。
「それで……倦怠期とやらは解消されたかの?」
「え?……ああ!
そういえばそう言う話だったね」
「忘れておったのか!?」
「ははは、うそうそ。
ジョーダンだよ。
でも、満足したし解消はされたかな。
これからもよろしくね、マオ」
「こちらこそじゃよ」
すっかり大満足した2人。
バスを降りた後は仲良く手を繋いで帰宅したのであった。




