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暑い日こそ熱い風呂 1

「ぐ……ふぅ……あつぅぅぅ」


「いや〜まさかここまで暑いとは予想外だったね」


2人で外に出かけたのは良かったのだが、例年以上の猛暑日となった本日……人間らしく耐性を最低まで抑えた2人は存分に苦しめられることになった。


「ひ……日傘を持ってきて助かったのじゃ」


「それでも暑さが貫通してくるんだけど……どうなってるの、日本の夏」


外はカンカンと陽が照りつけ、街路樹の中でも一際目立つ巨木からは複数の蝉の声が聞こえてくる。


「蝉の鳴き声もうるさすぎ……これって求愛行動なんでしょ?

人間が同じことしたら即座に警察行きだよね」


「同じこと……つまり、この暑い日に大声で愛を叫びあげると言うことか。

確かにむさ苦しいが警察を呼ぶほどの事かの?」


「え?だって、大声で交尾したーい!

って、叫ぶんでしょ?

そりゃ警察行きだよ」


「……いつもなら上手くツッコんでやれるのじゃがな。

こう暑くては考えもまとまらぬわ」


暑さのせいか段々と足取りが怪しくなるマオ。


元魔王である以上、倒れはしないと思うがこれは緊急に避難しなければ危ない。


そう考えたユウは何処に向かうか考えた末に一つの結論を出した。


「SPAに行こう!」


「この暑いのに風呂に入るのか?

汗を流したいと言う気持ちには同意じゃが」


「まぁまぁ、騙されたと思って。

定期便は……まだ来なさそうだからタクシー使っちゃおう」


「うーむ、この暑さから逃れられるのであれば、もう何でも良いわ」


こうして手近なタクシーを捕まえて乗り込む2人。


車内はいい感じに冷房が付いていて2人はようやくひと心地つく事が出来た。


「若い娘さん2人にはこの猛暑はキツかったろ」


運転手は気さくに話しかけてきたので、ユウも話に乗っかった。


「いや〜こんなに暑い日って中々経験しないから、貴重な体験だけど、もう懲り懲りかな」


「それに比べると車内は快適じゃのう。

随分と生き返ったわい」


「ははは、若いのに随分年寄りめいたお嬢さんだ。

おじさんなんかはこの中が職場だから良いんだけどね。

この暑さの中、外で働いている人には本当に頭が下がる思いだよ。

ほら、その交通整理をしている人なんて絶対に大変だよ」


運ちゃんに言われて窓の外を見ると、首にタオルを巻いたおじさんが一生懸命に交通整理をしている。


そしてその後ろの陥没した道路の中でも複数の人間が働いているのが見て取れた。


「確かに……こんな中でも頑張って仕事している人たちは沢山いるんだよね」


「全く……尊敬の念しか出てこぬのう」


「ま、若いお嬢さん方は大変な事はおじさん達に任せてしっかりと楽しんでくるといいさ。

ほら、着いたぞ」


「ありがとう!」


「世話になったのう」


「そんじゃ良い風呂を。

水分補給には気をつけるんだぞ」


そう言い残してタクシーは次の客を求めて去っていった。


「良い人だったね」


「うむ、少し気持ちが晴れたような気分じゃよ」


良い出会いに恵まれつつ、2人はウキウキでSPAの中に入るのであった。


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