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時間管理の大切さ

本日は出演者全員揃っての打ち合わせである。


タイムテーブルの書かれた資料を配りながら、里中は全員に語りかける。


「これが今回のタイムスケジュールよ。

ユニット毎の曲が終わって次のユニットに移る時はフリートークの時間となってるわ。

ここは何を話すかお任せするから適当に話を繋いでちょうだい」


「質問なんスけど、準備が終わったらスタッフから連絡は来るんスよね?」


「それは勿論よ……って、そう言えばこの中でリアル含めてライブの経験者っていたかしら?」


ナコの質問に答えてから気付いた里中が全員に質問する。


その中で手を上げたのはナコだけであった。


「自分は元々キーボードのサポートであちこちライブの手伝いしてた経験があるっス」


「なるほど、それで理解してる感じなのね。

他の子に聞くけど、こういうライブにおいて一番大事な事って何か分かる?」


里中に質問されて全員は一斉に考え込む。


そうしてからおずおずと手を上げたのは新人3人娘の1人であるメルであった。


「えっと、音楽のミスをしないとかですか?」


「うーん、正直ミスをしないのは理想ではあるけど、これだけの人数でやっている以上は音を外したりダンスを間違ったりは割と起こっちゃうわね。

ミスしない事も大事だけど、それよりもミスしても慌てない事が大事ね。

例えば歌詞を間違えてもライブバージョンだから今回はこれが正しい!

くらいに開き直っちゃっていいわよ」


「は〜そんなものなんですね。

でも、ミスしてもいいってのは気持ちが楽になったかもしれません」


「大事なのは観客の盛り上がりを途切れさせない事よ。

生のライブは完璧を求められているわけじゃなくて、その場にしかない空気感を求められてるの。

音も外さずに全て完璧ならレコーディングして配信している曲を聴いているのと大差ないでしょ?」


「確かにそうですね!

参考になります」


「ミス云々の話はこんな所でいいわね。

それでライブで一番大事な事は何か分かった?」


里中が再び周りを見渡すと次はマオが手を上げた。


「最初のナコとの会話から察するに時間管理であろう?

タイムテーブルとして決まっている以上はこちらを守らねばなるまい」


「流石マオちゃんね。

今回は合間の時間をかなり余裕持っているけど、時間はしっかり守ってちょうだい。

ナコちゃんはその辺りよく分かっているわよね?」


「そうっスね。

全員見てくれるのが理想っスけど、タイムテーブル見て好きなユニットの所だけ見に来る人ってのは必ずいるっスからね。

その人が時間に余裕あるならいいっスけど、好きなユニットを見るためにその時間だけ空けてきた……なんて事もあるんスよ。

それで見に来たらまだ始まってないとか、もう始まってたとかになると、クレーム入れられてもしょうがないっス」


ナコはかつて自分が出演したライブを思い出しながら話す。


かつて彼女が出演したライブでは3番目、午後2時出番の筈であった。


しかし、持ち時間が25分だったにも関わらず、最初に出演した男性は曲の合間にトークをたっぷりと挟みつつ、予定に無かった曲まで演奏し始めて40分も使ってしまった。


運営側がジェスチャーで止めるのも無視して強行した事で、彼は大ブーイングを受けながら、そのライブ主催者のイベントは出禁となってしまった。


更にイベントを行う人間は横の繋がりも強い為にそう言うことをするアーティストだと言う事が知れ渡り、二度とイベントの誘いが来なくなってしまったらしい。


その経験も含めて周りに語りかけると、今までは何処か軽かった空気が重くなるのを感じた。


「ナコちゃんが話したのは極端な例だけど、お客さんはこのタイムスケジュールを頼りに遊びに来ているの。

だから、時間は必ず厳守……分かったわね」


『はい!!』


真剣な表情で語る里中に全員が真面目に頷く。


この後は全体を通す練習であったのだが、彼女達は時間をかなり意識して良い結果を残すのであった。


ナコの話は実体験です……とは言え、私は客側の立場だったのですが。

30分過ぎてもトークをやめずに演奏を強行した時点で殆どの観客は呆れて白けていました。

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