格の違い
「まやかしだと!?」
かき消えたマオの姿を見た蜘蛛妖怪は辺りを見回す。
「何処に目をつけておるのじゃ。
妾は最初からここにおったぞ」
背後からかかる声にゾクっとした冷たいものを感じる。
慌てて振り向いた蜘蛛妖怪の人間体の顔をマオはその小さな手で掴んだ。
「どれ、お主が貯め込んだ霊力とやらを頂いてやるとするかのう……ふむふむ。
似たような力故に魔力に変換出来るが効率が悪いのう」
「な、や、やめ……」
蜘蛛妖怪はバタバタと抵抗するが、己の顔を掴んだ手は全く動かない。
そして暴れている間、その手を通して自分の身体からぐんぐんと力が吸い取られていく感覚がした。
不思議なことに力が吸い取られていく度に自分の顔を掴んでいる手が大きくなっている気がする。
「まぁ、こんな所じゃろう」
「!!??」
マオはそう言って手を離しがてら蜘蛛妖怪の額にデコピンをする。
だが、その威力はデコピンなどと言う可愛げのあるものではない。
蜘蛛妖怪の巨体を軽々と吹き飛ばして背後の巨木へと叩きつけた。
「ぐ、あ、はぁ……き、貴様!
な、どう言うことだ!?」
フラフラと立ち上がった蜘蛛妖怪が前を見ると、先程の幼児はいなくなり、代わりに絶世の美女がそこに立っていた。
その美女から湧き上がる力は凄まじく蜘蛛妖怪は叫びながらもガタガタと震えてまともに動くことが出来なくなる。
「くくく……実力差も分からぬグズならば後は死ぬしかなかろう。
なぁに、苦しませは……」
「ま、待て!
こっちには人質がいるんだぞ
こいつがどうなっても……!?」
そう言いながら結界内のユウを覗き込むと……中で退屈そうにしている彼女と目が合った。
♢ ♢ ♢
「ひゃく〜幾つだっけ?
まぁ、適当に150回っと!
細切れになっても再生するのは凄いと思うけど、復活までに時間かかりすぎじゃない?
お陰で前に何回斬ったか忘れちゃったじゃん」
ユウが不満げに語るように襲いかかってくる妖怪達はどれだけ細切れにした所で復活してくる。
しかし、細かく斬れば斬るほどに復活に時間を費やし、その間ひたすら待つだけという状況に嫌気がさしていた。
「面倒くさくなったし出ようかな」
そう思った矢先である。
視線を感じて上の方を向く……そこには暗闇が広がっているだけであるが、その先から確かに視線を感じた。
「もうそろそろって事かな。
それじゃ、出ちゃおっと」
ユウがそう言って2本の剣を地面に突き刺す。
そして、その剣を通して結界内に魔力を流し込んでいくと周囲からミシミシという音が聞こえた。
「〜〜♪」
そんな事は一切気にせずに鼻歌交じりで力を流し込んだ結果……ガラスが割れる音と共にユウの周りに張られた結界は粉々に砕け散った。




