とある石工士が起こした奇跡
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いつもありがとうございます。
ユウ達が元いた世界では女神、ユウ、マオの像を通じてライブ配信とアーカイブの配信を見ることが出来る。
この現象によって教会は参拝客が増加しており、寄付や聖水、護符の販売により大きな黒字を出していた。
この3種の像は其々の配信を流しているのだが、ルーナ経由で送られてくる配信情報をこの世界の女神がランダムで流す事もある。
つまりは、くじよじメンバーの配信も流れるということだ。
そんな中である1人の石工士が偶々見た配信映像にハマってしまった。
彼はその後も信託で予告されるその人物の配信をチェックしては楽しみに視聴していた……が、いかんせん配信回数が少な過ぎた。
石工士はどうにかこの配信を見れないかと悩んだ挙句に一つの答えに行き着く。
勇者像からは勇者の配信、魔王像からは魔王の配信……そして、女神像から女神の配信が流れるのであれば、この配信者の像を彫ればいいのだと。
そう考えた石工士はその配信者の像を無心に彫った。
そうして出来上がったのはステテコに草履を履いた冴えないオッサンの像だった。
本当にこんな冴えないオッサンの像から配信が流れるのであろうか?
彫った後に冷静になった石工士は疑問に思ったのだが、奇跡は起きた。
ユウ達の世界で一年最後の日曜日の昼間……その冴えないオッサンは同時視聴配信をやっていた。
それはその趣味のものなら誰もが好きで最も盛り上がる最高のレース……そう、有馬記念である。
そのオッサン、馬並萬太郎は競馬や麻雀、パチンコといったダメなオッサンの趣味を網羅して配信に流していた。
特に最近は擬人化された馬のゲームに触発されて、本家の馬を育成するゲーム配信を行いマニアから評価されていた。
石工士は偶々その配信を見て普段街中でのんびりと闊歩する馬がレースをして競い合うと言う映像に衝撃を受けてファンになったのだった。
そんな馬並が有馬記念などと言う大きなレースを配信しないわけがなかった。
そんな有馬記念の同時視聴を配信している馬並の像なのだが、この時女神の計らいで更なる奇跡を起こしていた。
同時視聴とは本来その視聴する映像はリスナー側が用意しなければいけない。
配信者の画面ではひたすら配信者が動きながらリアクションを取っているだけである。
本来はこの世界で行われる配信もそうなる予定だったのだが、なんと馬並の像からは配信画面とは別に有馬記念のレース映像も流れ始めたのだ。
石工士は初めて生で見る競馬場の熱気と馬達のレースの迫力に圧倒されながらものめり込んでいった。
そして見終わった後に思ったのだ……これは自分一人で楽しんで良いものではないと。
こうして彼は石工士の仲間や友人、その仲間達の友人と競馬仲間の輪をドンドンと広げていった。
その輪は国の騎士団にまで広がりこの世界にも競馬の歴史が生まれようとする……のだが、それはまた先の話である。




