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クリスマスのひととき

「街の中はすっかりクリスマスモードだね」


「ユウよ、見てみるのじゃ!

あちらもこちらもチキンとケーキを売っておるぞ。

元々チキンを取り扱っておる大手から、その辺りのコンビニまで大した盛況ぶりじゃのう」


「この時期は1番のかきいれ時というやつじゃて」


クリスマスの日、ユウとマオの2人は街のイルミネーションを見学するために外を出歩いていた。


街の至る所から楽しそうな家族やカップルの声、チキンやケーキを店頭販売するために呼び込みをする声で溢れて騒がしい……だが、その喧騒も華やかな街を彩っている一つとして好意的に受け止めることが出来た。


「かきいれどきか……あれ?

これって漢字でどう書くんだっけ?

引っ掻くのかく?」


「引っ掻いてどうするのじゃ……かきいれ時のかきは物を書く方じゃよ」


「てっきり熊手みたいなもんで客を根こそぎ掻いて店の中に入れるからそう書くものだと。

物を書く方なのは何でなの?」


「帳簿をつける時に書くという意味じゃな。

ここが帳簿の書き入れ時という訳じゃ」


「なるほどねぇ」


他愛もない話をしながらもウキウキしてくるのは街の明るい雰囲気のせいだろう。


そう言って暫く歩いていると目的の場所まで到着した。


「チキン関係はやっぱり最大手のここかな」


「うむ、馴染みの爺様もサンタ服で出迎えてくれておるわ」


「そういえばこのお爺さんの眼鏡ってさ……全部本当に度が入ってるって知ってた?」


「なに!?

……本当じゃな、レンズの後ろの方が歪んで見える」


「これは流石のマオも知らなかったんだね。

とは言え、僕もテレビで見て初めて知ったんだけど。

動画配信で偶々昔やってた雑学を紹介する番組見てたんだよね」


「ああ、あのへぇ〜というやつじゃな」


「そうそう。

雑学って下らないものも多いけど面白いよね」


「それだけ人は知識欲と好奇心が旺盛な生き物という事であろう。

この国の者達は特にのう」


チキンを買った2人は雑談を続けながら次の目的地に向かう。


目的地と言うと大袈裟で実情は家の近くにあるコンビニなのだが……そこで予約していたオードブルとケーキを受け取りに向かっていた。


「この国の人達が特に……って、何で?」


「それはこの国が平和で飢えておらぬからじゃよ。

好奇心も娯楽や文化の発展も自身の生活に余裕があってこそじゃよ。

生き死にに関わるほどに生活に余裕が無ければそのようなものに手を出す余裕など無かろうて」


「ああ、それは言えてるかも。

あっちでも王都周辺は華々しかったけど、離れるほどに生活は厳しくなって教育もままならなくなってた気がするよ」


「人の国の王が降ろされてからかなりマシになったとルーナから聞いてはおるがのう。

人々の安寧に妾達の配信も役立っておるようじゃしな」


「それなら尚更頑張らないとね。

……僕たちが持ち帰った食べ物でクリスマス配信なんてやったら向こうの世界でもそんな風習が生まれたりして?」


「余裕があれば流行るかもしれぬのう。

どれ、今宵少し試してみようかの」


「捨てた故郷とは言え向こうが豊かになるのは良い事だからね。

やってみようか」


こうして急遽決まった企画をササヤッキーで告知しつつ2人は帰路に着くのであった。

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