巫女先輩の意外な顔
「ああ、あの4人をデビューさせたいと。
……そうですね。
広報活動にもなりますし問題はありません。
本業を優先させて頂くのが前提ですが」
「それはもちろんよ〜あの4人には好きなように配信してもらって構わないわ。
その中で少しでも向こう側の世界を話してほしいってだけ。
ユウちゃんやマオちゃんみたいにね」
里中の机の上にあるモニターにはいつの間にか退魔士協会の関係者でありながら、くじよじのライバーをやっている神使巫女の姿が映っていた。
「まさか巫女さんが退魔士の関係者だなんて思わなかったよね」
「うむ……直接会った時はそのような雰囲気を微塵も出しておらんかったからのう。
すっかり騙されてしまったわ」
「あら……ユウちゃんとマオちゃんもいらっしゃるんですね。
ウチの子達がお世話になったみたいで。
改めてお礼を言わせてください」
ユウとマオの会話が聞こえてきたのか、二人の存在に気付いた巫女がモニター越しにペコリと頭を下げる。
「気にしなくていいよ。
こっちも助かっちゃったし」
「しかし、巫女先輩がそちら側の人間じゃったとは。
実は戦える人なんじゃな」
「え?私は戦えませんけど」
一連の流れから巫女も退魔士だと考えていた2人の予想と裏腹に、キョトンとした顔で答える巫女。
「巫女さんって退魔士じゃないの?」
「私は協会に所属しているだけですよ。
ただ、ウチの神社ってかなり古くからあるじゃないですか。
そのせいで上の立場から下の退魔士に指示を出す役割を担っているんですよね」
「それは大変そうじゃな」
「大変ですよ〜やってる事は事務員と変わりませんからね。
そもそも私って霊感0!
全くナッシングで一度も幽霊や妖怪を見たことがないのに何でこの仕事やらされてるんだろうって気分になります」
やれやれと言った感じで両手を上げて首を振る巫女。
「え?それじゃつまり巫女さんはあの映像に映っていた妖怪たちの事分からなかったの?」
「全く見えませんね。
ただ、巻き起こる砂埃などを見てそこに何かいるとは思いますが」
「それでよくその立場におるものじゃ」
「事務員だって言ったじゃないですが。
依頼を受けて、対応できる人に仕事を割り振ると言う作業だけなら霊感なんていりませんよ。
必要なのは知識と経験、後は人を見る目だけです」
「なるほどのう」
「まぁまぁ、難しい話は置いといて……許可が下りたからにはやるわよ〜!!
今から絵師さんに連絡取って、モデリングしている人にも……どういう風に売り出すかも決めるから忙しくなるわよ」
まるで瞳に火がついたかと錯覚するほどの情熱で動き出す里中。
その様子をユウとマオは呆れた様な嬉しそうな様子で見ていた。
「これは止まりそうにないね」
「まぁ、この突拍子も無い情熱で妾達も助けられたのじゃ。
手助けできる所はしてやろうではないか」
「そうだね」
こうしてくじよじでは新たな仲間がデビューする事が決まったのであった。




