樹木の山と妖怪の里 13
「あれが人柱にされた鶴吉さんの身体かな?
中に魂みたいなものを感じる気がする」
「ちょっと待って」
ユウの問いかけにカザが目を閉じる。
目の前が真っ暗になる中で先程見た鶴吉の身体があった辺りから太陽のように眩しい光を感じた。
「うん……間違いなくあの中に何かが入ってる。
多分僕たちの依頼者で低位の神だと思う」
(低位の神などと無礼な口をきくものだ。
我はこの力を手にして真なる神の仲間入りを果たしたのだ)
鶴吉の身体はピクリとも動いていない……しかし、この空間に響くような低い声が聞こえてきた。
「妖怪とその力を封じていた人間の力を奪っておいて何が神様だか……そういうのは小悪党って言うんだよ」
「そうそう。
本当の神様なら人間の力に頼る必要なんて無いでしょ。
それで嘘ついて契約不履行なんて笑い話にもならないよ。
その性根を叩き直してあげる」
(ならばその身で思い知るがいい……そしてお前達の力も我が吸収して更なる高みに昇ってやろうぞ)
樹木子に取り憑いた神……樹木神の身体から無数の枝がユウとカザに向かって襲いかかる。
2人はそれらを捌いていくのだが斬り払い、殴り倒しても更に数を増殖させていく。
(ふふふ……お前達のおかげでどんどんと馴染んでいくぞ)
「これはちょっとジリ貧かな。
あの再生力を止めるにはどうしたらいいか分かる?」
「多分、融合した鶴吉さんの身体のお陰で力を制御出来てるんだと思う……止めるならあの身体に攻撃加えなくちゃいけないかな」
「やっぱりそうだよね……心情としては遠慮したいところだけど仕方ないかな」
「……やるなら僕も奥の手を使うよ」
そう言ってカザが懐から一枚のお札を取り出しその力を解放しようとした時であった。
「結界大障壁!!」
叫び声と共にその場所から眩い光が解き放たれた。
その光はユウ達の周りで蠢く枝や根っこを跡形もなく浄化していく。
更に広がった結界が樹木神に纏わりついてその動きを停止させた。
(馬鹿野郎!
今のお前の霊力は限られてるって言ってるのに何全力出してやがるんだ!!)
「うるさい!
このままだとあんたの身体が壊されちゃうでしょ!!」
そこに現れたのは大幣を持った巫女服の女性……カコだった。
「カコさん!?
今のは……って話してる暇はないか。
ここは危ないよ」
「多少の心得はあるみたいだけど今の一撃で霊力が空になっちゃったんじゃないの?
僕たちに任せて下がっててくれないかな?」
「ここをどうにかしようとしてくれている貴女達には感謝している…….でも、ここは私に任せてくれない?
大昔に死んで今は樹木子と融合してるから残していても生き返れる訳じゃない。
それでも……あいつの身体だから残しておいてあげたいの」
そう言って2人に頭を下げるカコ。
そんなカコの様子にユウとカザは顔を合わせる。
「という事らしいけど計画変更でカコさんに合わせて僕たちがサポートに回るって事でオーケー?」
「オッケー!
じゃあ、カコさん……だっけ。
貴女に任せて僕たちはあいつの動きを抑えてるからやっちゃって」
あまりにも気軽に答える2人にカコは驚く。
「自分で言っといて何だけど何する気だとかそういうこと聞かなくていいのかい?
今日会った人間を信用しすぎだと思うけど」
「昔亡くなった人の為にそこまで身体張れる人を信じなくて何が勇者だって話だからね」
「それに僕達も鶴吉さんの身体を傷付けたくはないからさ。
露払いは僕たちに任せてよ……あ、何やるか分からないけどそんな空っぽの霊力じゃ心許ないからこれ飲んでって」
カザはそう言ってカコに瓶を投げ渡した。
「これは?」
「ウチのシスター謹製聖水。
飲めば多少は霊力回復するから」
「ほんとに!?助かる」
「因みにそれは一番効果の高くて激マズなやつ」
「……ほんっと、たすかるわ」
今更ですが花鳥風月については私が書いて完結させているマガドギバスターズをご参照ください。
今回使おうとしたお札や聖水の話もあります。




