樹木の山と妖怪の里 3
「流石に人間相手に刃物使っちゃうのは不味いかな」
ユウはそう言うとバックから木剣を取り出す。
勇者の修行時代に使っていた武器なのだが使用していた期間が長いためかしっくりとくる。
「ユウはバットを持った者を。
妾はシスターを受け持とう。
それと……常に警戒は怠るでないぞ」
「気付いてるから大丈夫」
こうして2人が一瞬で戦いへの準備を終えた時、向かい合う女性2人もお互いにアイコンタクトを取ると頷いて前に出る。
バットの女性が大きく跳躍してユウに向かって真っ直ぐに振り下ろす。
ユウは木剣を真横にして受け止め、剣を右に傾けて受け流しつつ空いた脇腹に蹴りを叩き込もうとした。
パァン!という音と共に足が脇腹に触れる直前にその間を何かがすり抜けていく。
ユウが直前で足を止めなければ、それは彼女の足に直撃していたであろう。
「もしかして最初から気付いてた感じ?」
「上に1人、離れた所にもう1人いるのは知ってるよ」
「あちゃ〜、こりゃ手強いぞ」
♢ ♢ ♢
ユウとバットの女性の戦いが始まっていた一方でマオとシスターの戦いも始まっていた。
「貴方……その角と尻尾は悪魔ですか。
その見た目からサキュバスということは無いでしょうが」
「初対面の割には失礼な女じゃな」
「ではサキュバスなのですか?」
「いや、ハズレじゃよ」
冷静に会話をしているように見えるが、シスターは警棒を真緒に振り回しながらの質問である。
マオはそれらの攻撃を回避しながら答えつつ頭の中で考える。
ここで2人……いや、仲間まで含めて倒す事は難しくない。
だが、状況が分からぬ状態で力で解決するのはどうしたものかとも思う。
それはマオが否定した魔族の生き方と同じだと感じたからだ。
そんな中で発砲音が聞こえてユウへと弾が向かっていくのが見える。
ユウの足へと向かっているが反応しているので問題は無いだろう。
「お主達の切り札も無駄に終わりそうじゃな」
「そうですね……ここは失礼させてもらいましょう」
シスターはそう言うと懐から球を取り出して上に放り投げた。
またも発砲音が聞こえてその球が撃ち抜かれ、中から煙が立ち込めて辺りを包んでいく。
「目眩しか……ユウはどうなっておる?」
マオがユウの方を向くと、そちらでは木剣で女性を圧倒する姿が見えた。
「悪いけどここは退かせてもらうよ」
女性は後ろに向かって跳躍すると、そのまま逃走していった。
「追いかけたほうがいい?」
「それには及ばぬよ」
煙がなくなった頃には女性二人の姿は無く、木の上と離れた所にいた女性の気配も無くなっていた。




