樹木山と妖怪の里 2
ルーナが開けた穴を通って隔離された世界に入っていく2人。
外から強引に開ける事が可能ではあるのだが、原因を取り除かなければ道は直ぐに閉じてしまう。
事実ユウ達が通った入口もすぐに消えて無くなってしまった。
「何だか不思議な現象だね」
「うむ、いま妾達はこの世界風に言うと神隠しに遭っているそうじゃ。
この世界そのものが神隠しに遭っているとも言えるがのう」
マオがそう言って顔を上げる。
2人が今いる場所は木々に覆われた森の中。
その中で辛うじて道と言える場所にいた。
道は上と下の両方に続いている。
「これって向かうべきは上だよね?」
「下に降りたところで何があるとも思えんからのう。
しかし……中々似合うではないか?」
マオはそう言いながらユウの後ろ姿を眺める。
その視線の先はいつもの姿なのだが、少しだけ違う場面があった。
「も〜からかわなくていいから」
そう言って振り返ったユウの頭の上でピンと伸びた獣の耳が左右に揺れる。
更に腰から伸びたふさふさの尻尾が一瞬だけ上にピンと伸びた。
「本気で言っておるんじゃがなぁ。
仕事のためとはいえケモミミと尻尾のついたユウを拝めただけ満足じゃよ」
「ルーナの知り合いの神様が言うには妖怪の気配が複数するって話だったからね。
マオは変装さえ解けば怪異の仲間に見えるけど僕はそうじゃないからって……狗神だっけ?
その変装することになるとは」
「剣を振るうのが得意で見た目も人間に獣耳と尻尾をつけただけ……まさに今のユウの姿と変わらぬと言うのじゃから変装するにはピッタリじゃろう」
「それはそうなんだろうけど……まぁ、いいや。
とりあえず行こうか」
そう言って上を目指して歩き始める2人。
神隠しに遭った世界で時間の感覚が正常なのかは分からない。
しかし、どれだけ歩こうとも山頂は一切見えてこない。
それどころか周りの景色に変化があったようにも思えなかった。
「ねぇ、マオ。
これって多分だけど僕たちもう嵌められてるよね?」
「そうじゃな……何者かに見られておる気配がプンプンするわい」
2人がそう話しながら背中合わせに辺りを見回した時であった。
「あら……気づかれてしまったようですわ」
「へぇ、野良妖怪の割にはやるみたいだね」
目の前の木々から姿を表したのは高校生くらいの2人の女性。
1人は黒く短い髪に野球帽を被りバットを持った……こちらに来た頃のユウに似た雰囲気を持つ女性。
そしてもう1人は修道服に身を包んだ金髪ロングヘアーの女性。
一見すると清楚と言う言葉が似合う姿なのだが、手にはその見た目にそぐわない警棒を持っていた。
「マオ……この子達普通の人間じゃない」
「うむ……見た目に騙されてはいかんらしいのう」
バットと警棒を構えて敵意を向ける女性に対して、ユウとマオも構えて戦闘態勢を取った。




