大きなお風呂は良いところ 4
風呂場から出た2人は更衣室で室内着に着替える。
更衣室を出て最初に向かうのは食堂だ。
「お風呂に入ったばかりでガッツリも何だし麺類にしておこうかな」
「奇遇じゃな。
妾も麺の気分じゃよ」
「マオの場合は飲むからガッツリが要らないだけでしょ……決めた!
天ざるにしようっと」
「妾は普通のざる蕎麦にしておこうかのう」
こうして2人は其々の食事を注文してテーブルに座る。
マオの席にはちゃっかりとビールが置いてあり、早速と言わんばかりに口をつけた。
「美味しい?」
「うむ……風呂上がりに冷えたビールは間違いがないのう。
普通の冷えたビールも良いが、この氷点下のビールは格別の美味さじゃ」
「僕はお酒の良さが分からないからなぁ。
食事は普通のお茶でいいや」
「それもまた良し……じゃな」
「後はお蕎麦の締めの蕎麦湯は毎回楽しみ」
「確かにそれはその通りじゃ。
あれを生み出したものは真に天才じゃよ」
「これがざる蕎麦を頼む1番の楽しみと言っても過言じゃないからね」
和やかに談笑しながら食事をしていると、元々軽めに頼んでいたとはいえ、あっという間にざるの上が空いてしまった。
「それでは食休みといこうかのう」
「あれ?一杯でいいの?」
「この後の事を考えると飲み過ぎも良くないであろう。
幾ら妾達がアルコールを寄せ付けぬ性質だとしてものう」
「まぁ、飲んでいるところを見ている人達もいる……というか、色んな意味で常に視線は集めてるしね」
「そんなに外国人風の見た目が珍しいかのう?」
本日のマオは大人の姿という事で長身でスタイル抜群である。
ユウは元から黒髪であり日本人と言っても違和感のない見た目なのだが、マオの場合は黒髪に染めても日本人とは言いづらいビジュアルをしている。
それならばと一般的な外国人の女性らしく金髪にしてみたのだが、海外の有名モデルとしか言いようがないマオが和風の室内着を着こなしてビールを飲む姿は絵になりすぎていた。
その為、ここに至るまで常に人々に好機な目で見られていたのだ。
「これで何杯も飲んだ後にあそこに行ってたら危ないって止められそうだもんね」
「そうじゃろ?
幾ら食休みを挟んだところで誤魔化しは効かぬよ」
「一杯ぐらいならこの後の食休みと合わせて誤魔化しも効きそうだね」
「そういうことじゃ」
こうして2人は食器を片すと上の階に向かった。
上の階は休憩スペースとなっており、寝心地の良い椅子が所狭しと並べられている。
更に周りには大量の漫画が詰まった本棚があり、さながら漫画喫茶のようである。
シリーズによっては最新巻まで含めて全巻置いてある事もあり、ここでお目当ての漫画を制覇するのも2人の目的だったのだ。
ユウは以前から目をつけていた異能力魔法バトル漫画、マオは現代と江戸時代を行き来する料理人の漫画を手に取り読み始めたのだった。
前者は20年ぶりくらいに連載再開した作品。
後者は有名なラーメン漫画の人の作品です。
どちらも微妙に分からない辺りをチョイスしたつもりなので、何の作品か分かった人は素晴らしい。




