大きなお風呂は良いところ 1
ユウとマオは配信で生活費を稼いでいるわけだが、休みはしっかりと取っている。
コラボなどのお誘いがあれば別ではあるが、1週間に1日は配信を空けるようにしていた。
ある休みの日、2人は日頃の疲れを癒すと言う目的で鶴見にあるスーパー銭湯へと向かった。
「ん〜〜〜!!
やっぱり椅子に座りながら配信してるから身体が凝り固まってくるんだよね」
「そうじゃなぁ……背中も腰もバキバキじゃよ」
「僕たちって身体の怪我とかは治りが早いし、こういうのって魔法で治せるもんだとばかり思ってたんだけど」
「何故かこのような生活疲れは治らんのう。
まぁ、この世界で生きている者との感覚がズレないというのは良いことではないか?
特に配信という形でこの世界の者たちと交流しておるのじゃから尚更じゃろう」
「それもそうか。
それにこういう身体の痛みが無いと銭湯や温泉に行こうなんて思わないからね」
「そういう事じゃよ。
お腹が空いた時に食べるご飯と同じように、疲れを感じているからこそ感じられる快感というものがあるのでは無いかの?」
「確かに!
今の状態ならかなり気持ち良くお風呂に入れそうだから楽しみだね」
「うむ、楽しみなのじゃ」
現在2人は送迎バスに乗ってスーパー銭湯を目指していた。
この銭湯は駅から離れているのだが、行きと帰りに自前で定期便を出しておりアクセスに困ることは無い。
バスで20分ほど走ると目的地に到着する。
2人は入り口を抜けると靴を脱いでロッカーに預けて鍵をかける。
更に受付でロッカーキーと識別を兼ね添えたリストバンドを貰う。
この銭湯では、食事や自販機での買い物。
マッサージの受付やマッサージ機の使用など様々な有料コンテンツの利用経歴がこのリストバンドに記録されていく。
帰るときはこのリストバンドを受付に渡して精算という完全後払い制のシステムなのだ。
受付では更に入館証と館内着の引換券も貰う。
それらを受け取った2人は先ず、入口で入館証を使って中に入り、目の前にあるカウンターに引換券を渡して館内着とタオルのセットをもらう。
これらの準備が整ったら2階にある温泉へと向かうのだが、階段を上がってすぐに見えてきたのは食堂だった。
「食堂は広いし色んなメニューがあるから楽しみだね」
「風呂から上がっての一杯が楽しみじゃな」
そう、マオの言葉が表す通りに今日は貴重な魔力を使って大人の姿になっている。
これも彼女が風呂上がりの一杯という至高を求めた結果である。
とは言え、ユウとしても久しぶりに本来の姿のマオとのデートということでウキウキしている部分がある。
こうして上機嫌の2人は温泉とその後の事を楽しみに思いつつ更衣室へとむかったのであった。




