八景島へ遊びに行こう 5
クラゲは今やトップクラスに人気のある海洋生物である。
優雅に海中を漂う姿に心身共に疲弊した現代人は癒やされるのだという。
その為にどの水族館でも大きくクラゲエリアを作り鑑賞できるようになっている。
水族館に通い慣れているユウとマオはこの八景島でもクラゲエリアがあるのかという程度の感想で展示されている水槽を覗いていた。
しかし、とある水槽の前で2人は足を止めた。
その水槽に飾られていたのはユウレイクラゲ。
クラゲの本体部分がかなり大きく、しっかりと色が付いている不気味なクラゲであった。
2人が足を止めた理由はその姿ではなく、水槽の横に書かれた説明であった。
そこにはユウレイクラゲは同じクラゲであるミズクラゲを食べ、水槽いっぱいにミズクラゲを入れても15分ほどで平らげてしまうと書かれていたのだ。
そして、水槽の中にはユウレイクラゲの他にフヨフヨと漂う二匹のミズクラゲ。
「これって……餌ってことだよね?」
「そうじゃろうな……しかし、どのような手段で食べるのじゃ?」
「分かんないから少し観察してみようか?」
ユウの提案により2人はじっとユウレイクラゲの水槽を観察する。
変わらずにふよふよと水槽の中を漂うクラゲ達だが変化はすぐに起きた。
ユウレイクラゲが伸ばしていた触手にミズクラゲが触れてしまったのだ。
そこでミズクラゲの存在を感知したユウレイクラゲの触手達が少しずつ巻き付いていき、気付けばミズクラゲは雁字搦めにされていた。
そしてミズクラゲは徐々にユウレイクラゲに引き寄せられ、まるで頭の上に乗っかったような体制になる。
見ている分には微笑ましくもある光景だが、行われている事は捕食だ。
ミズクラゲの身体は少しずつ萎んでいき、やがてユウレイクラゲに同化するように消え去ってしまった。
「なんか……すごい光景見ちゃったね」
「物珍しいものを見れて喜ぶべきなんじゃろうな」
そう言いながらも2人は浮かない顔でユウレイクラゲの水槽から離れていく。
そして数歩先の水槽にある展示物を見て顔を引き攣らせた。
その展示されている生き物は無数のミズクラゲであった。
「はは……こいつらも餌になっちゃうのか」
「分からぬが今のうちに拝んでおくか、南無」
こうして2人は物珍しい光景を見れた事に喜びながらもテンションは落として次のエリアに向かうのであった。
実際に見てきた体験談です。




