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福岡人のソウルフード

元祖の元祖と言われるロングビーチラーメンに辿り着いた3人は店の前で食券を買って中に入っていく。


店内には7〜8人が囲める巨大なテーブルが幾つも置いてあった。


「しゃーせー、こちらにどうぞー!!」


案内されたテーブルでは3人が座る以外の椅子は埋まっていた……そう、この店では相席が基本なのである。


テーブルの中央には薬味や調味料が置かれており、知らない人物同士の筈なのに、調味料を取ろうとして苦戦する男性に、その調味料に近い男性がスッと手渡して頭を下げていたりと独自のコミュニケーションが取られていて見ていて面白い。


「連れてきてから思ったのですが、お二人はこのようなタイプのお店は大丈夫ですか?」


いつも通り友人と食べにくる感覚で連れてきたミコだったが、人によって……特に女性の中には相席など絶対に無理というタイプもいるだろう。


「僕は全然平気だよ。

元の世界の酒場なんて大体こんなもんだし、そこに騒がしさがあるからね。

大人しく食事していて、更に気遣いあってるから居心地いいよ」


「妾もじゃな。

魔族も似たようなもので、寧ろこの世界のように客の一組一組大事にするのではなく、詰めれる所に詰めてしまえと言う商売じゃったな」


どうやらミコの杞憂だったようである。


見た目は可憐な美少女の2人だが、中身が元勇者と元魔王という事が抜け落ちていた。


ミコがそう思うほどに2人は現代日本に適応しているとも言えるのだが。


「ラーメン、かた三丁お待ち!」


程なくして男性定員が3人にラーメンを運んでくる。


「え?これ普通?」


「大盛りと間違えておらんよな?」


3人の前に運び込まれたラーメンの器は自分達がよく行くラーメン店の1.5倍ほどの大きさがあった。


その器の中にスープと具材と麺が並々と入っていることが分かる。


「これが普通ですよ。

それでは頂きましょう」


そう言ってミコは慣れた手つきでラーメンを食べ始める。


ユウとマオも負けじと口に入れるのだが、その瞬間に濃厚すぎるスープが口の中を支配する。


更に麺が細麺の為に麺を啜るだけでこれでもかと口の中にスープが入ってくる。


美味い……だが濃ゆい。


この瞬間に2人は周りの人間が黙々と食べている理由を察した。


喋る余裕など全くないのだ。


喋ると口の中から濃いスープが垂れてくる気がする。


そして、大きな器の中の麺はどんどんとスープを吸って体積を増していくだろう。


それが分かっているから誰一人として語らずに黙々と口の中に麺を運ぶ作業をしているのだ。


正直一杯食べるだけで2人は限界であった……しかし、目の前で驚くべき光景が繰り広げられる。


「こっち、替え玉カタね」


「うちはバリカタで」


同じテーブルに座った男性達が目の前に100円玉を置いて替え玉を注文し始めたのだ。


そして、


「わたくしもバリカタでお願いしますわ」


とミコも100円玉を置いて替え玉を注文し始めた。


何とか食べ切った2人が驚いた顔で見ているとそれに気がついたミコが


「あら?お二人も替え玉如何ですか?

それだけでは足りないでしょう?」


と言い始めた。


「いや〜僕は大丈夫かな」


「さ、さっき飛行機を降りたばかりじゃからまだ調子が……のう?」


「そうそう……あ、僕たちは外で待ってるからゆっくり食べてて」


「あら……そうですか?

すぐに済ませますのでお待ちになっていてください」


というミコの前に麺を持った店員が現れる。


その麺の量は先程2人が食べた量と全く同じであった。


「なんか……すごい所だね、福岡」


「そうじゃのう……先制パンチを食らった気分じゃ」


「水……飲んどこ」


「妾の分も頼むのじゃ」


こうして本当にミコがすぐに済ませてくるまでの僅かな時間に水を飲んで濃くなった胃の中を薄める作業に没頭するのであったり

福岡人は平気で替え玉しますが、他県から来た人は驚愕の表情でそれを見るまでがワンセットです。

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