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ユウとマオのデート 4

カミュちゃんがユウを店の奥に連れて行って30分程経ち、ようやく準備が整ったらしい。


「お待たせ〜どうよ、これ!」


自信満々なカミュちゃんに手を引かれ照れた様子でやってくるユウ。


一年かけて伸ばした髪をカツラに納めているのだろうか?


ショートカットになった彼女は白いシャツにグレーのベスト。


更にその上にお腹の上の部分までしかない丈の短いジャケットを羽織っていた。


首には黒いループタイ、左の襟元からは赤い宝石と銀のチェーンで組まれたタキシードピンブローチが胸のポケットの上まで伸びていて、ポケットから畳まれた白いハンケチーフが顔を覗かせている。


下はシンプルなスーツパンツなのだが、足元は男装していることを仄かにアピールするかの如くインヒールのレザーシューズとなっていた。


そして極め付けは白手袋であろう。


正に今のマオに付き従うにふさわしい男装の執事の完成である。


「す…す…はー。すー。はー」


その姿を一目見たマオは咄嗟に声が出ない。


深呼吸して何とか息を整えると興奮した声で叫ぶ。


「素晴らしい!流石はカミュちゃんじゃ!!!!」


「そうでしょうとも!

でも、これはマオちゃんと同じで最高に素材が良かったからだからね」


「そこまで喜んでくれたならやった甲斐があるけど……気に入ったみたいだしこれは買っていこうかな?

カミュちゃん、これ全部込みでいくら?」


「うむうむ、ありがとう。

その前に一つお願いしてもいいかね?」


「なに?」


「左手の人差し指がいいかな?

その部分の手袋を少し緩めて……そうそう。

そして、伸びた部分を口に咥えて無理やり口で取ろうとしながらこちらを睨みつける顔で……」


ユウが言われた通りに手袋の先を噛んで口で外すふりをしながらカミュちゃん達の方を見下すように睨みつける。


その瞬間に膝から崩れ落ちる音がした……それも二つ。


「ちょっと!?

マオもカミュちゃんも大丈夫?」


2人の肩を持ってブンブンと揺さぶったのだが


「えへ、えへへ……もう全部あげちゃうんで好きに持ってちゃってください〜」


「何でも買うてやるから好きなものを持ってくるのじゃ」


と夢見心地にとんでもない事しか言えない状態になっていたのだった。


♢ ♢ ♢


「どう?少しは落ち着いた?」


勝手をするのもどうかと思ったが、2人が予想以上に正気を取り戻さないので仕方なく事務所の方に行ってインスタントコーヒーを見つけたユウが2人に配る。


その際にもカミュちゃんは


「うほっ!イケメン男装執事様からの給仕!!」


と正気を失いかけていたが。


しかし、思いっきり濃くしてやったコーヒーを飲んだことで2人の意識が段々と覚醒してきたらしい。


「いやいや、すまないね。

2次元の理想のシーンを生で見られて興奮しすぎてしまったようだ」


「うむ……あまりの破壊力に妾までおかしくなってしまったようじゃ。

精神汚染系の魔法よりも強力じゃな」


「素直に褒め言葉として受け取っておくよ。

それでこれ全部で幾らなの?」


「私としては本当に持っていってもらって構わないんだがね」


「そういう訳にはいかないよ。

人の家の物勝手に持っていったりする類の勇者じゃないからね」


「私が許可しているから良いとは思うんだが……そうだ!

ならば2人に協力してもらいたい事があるので、その報酬として服を一式プレゼントするというのはどうだろうか?」


暫く悩んだカミュちゃんが名案とばかりに提案してくる。


「変人ではあるが妙なことは要求してこんじゃろう。

妾は構わぬがユウはどうするのじゃ?」


「うーん、引き受けないといけなさそうだし構わないよ」


「変な事は要求しないさ。

本業の宣材写真を撮らせてもらえたら良いだけだからね」


「本業?」


「そう言えばユウには服を取り扱っている所としか紹介してなかったのう。

この店は服の販売・レンタルをしているコスプレ撮影スタジオなのじゃよ」


「貴女たち2人なら最高の宣材写真になるわ!」



これまた皆が絶対に好きだろうと思う男装執事ファッションですね。

そして鉄板級に好きだろうというポーズまでさせた欲張りセットです。

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