神使巫女の東京観光 1
「それじゃ、どこか行きたい場所はありますか?」
とある日、ユウとマオは1人の女性を連れて歩いていた。
黒髪を左右に三つ編みにした童顔の女性。
「やはりこちらの方の神仏関係に行ってみたいですわね。
定番ですが浅草寺に連れて行ってもらっても良いでしょうか?」
そう、彼女は神使巫女。
福岡から配信業を行っている彼女ではあるが、今回は直接会わねばならない仕事の話があった為に東京までやってきていたのだ。
「ふむ、浅草寺か……ならば秋葉原からの乗り換えじゃな」
「あら、秋葉原を通るのですね」
「先輩、秋葉原に興味あるんですか?」
「それはもう!
私のような趣味を持つ人間には聖地と呼べる場所ですわ」
まるで恋する乙女のようにウットリとした表情を浮かべる……が、騙されてはいけない。
彼女の趣味は大人のゲームなのだから。
本人もその自覚はあるのだろう。
「秋葉原に先に寄るかのう?」
という答えに頭を振って答えた。
煩悩塗れの品物を神仏の祀られている場所に持ち込むわけに行かないと。
山手線で秋葉原へと向かう途中でマオが声を上げた。
「むむ、上野で降りてメトロから乗り換えた方が直接行けるようですな。
秋葉原からの乗り換えは浅草橋という少し離れた場所になるようなのじゃ」
「それなら上野で乗り換えましょう。
どうせ帰りに寄るのですから秋葉原は後に回してくれて構いませんよ」
「じゃあ、そのルートで!」
3人が上野駅に降り立つと何処もかしこもパンダだらけであった。
「まぁ、可愛らしいですわね」
「あんまり来ないから忘れてたけど動物園はパンダを飼育してるんだっけ」
「そうじゃな。
巫女先輩は実物のパンダが見たいかの?」
「まだ暫くはこちらに滞在する予定ですので今日は大丈夫ですよ。
まずは浅草寺に参りましょう」
こうして3人は地下鉄に乗り換えて浅草までやってくる。
駅から出ると有名な雷門や人力車などテレビや雑誌で見た光景が広がっていた。
「あらあら、凄い人ですわね」
「外国人の人が多いね」
「有名な観光スポットじゃからのう」
雷門を抜けて境内に入ると、中央に煙の出ている陶器を見つける。
そこには多数の人が訪れており手招きして煙を引き寄せる仕草をしていた。
「あれは何をしているのでしょうか?」
「うーん、こういう時はマオに聞いてみよう」
「あれは常香炉と呼ばれるものじゃな。
常香炉から出る煙を自身の悪いところに浴びせると治りが良くなると言われておるのじゃ。
巫女先輩は何処か悪いところはあるかの?」
巫女は暫く考えてあっと手を叩いてから眼鏡に手をかけた。
「私、視力が悪いので目に煙を浴びせては!?」
「いや、それは逆に目が悪くなると思うよ」
「そうじゃな……妾達は健康そのものじゃし、人も多いので避けていくかの」
こうして3人は常香炉を避けてから作法に則ってお参りを終わらせる。
「それじゃ秋葉原に行く?」
「時間はまだありますか?」
まだお昼を過ぎたくらいで2人はまだまだ余裕があったので頷く。
「それでは先にスカイツリーに行ってみたいですわ」
浅草橋と浅草駅は路線が違うので間違いやすいと思います。
浅草橋から浅草寺は割と距離あります。




