ハロウィンの日 2
「いや〜やっぱりお二人に任せて正解でしたね。
アホがほいほい釣れましたよ」
ユウとマオ、その後ろにチャラいホスト風の男が2人並んでいるのを見て満足そうに頷く巫女。
「意外と簡単に釣れてびっくりだよ」
「結局、こやつらで間違いないんじゃよな?」
「ええ、バッチリですよ」
焦点の定まらない目でフラフラと揺れている2人を、タブレットを見ながら確認する。
「それにしても吸血鬼がわざわざこっちに来て花嫁探しに来るとはねぇ」
「初めに聞いた時には耳を疑ったわい」
そう、巫女が話していた、ヨーロッパの怪異が日本に入り込んできた理由。
それは花嫁探しなのだという。
近年、不景気からハロウィンで浮かれるということも少なくなり、また、このような話が広まったことから、教会勢力も目を光らせていた。
結果、現世から人を連れ去ることも難しくなってしまっていたのである。
そこで彼らが目をつけたのが日本であった。
テレビなどで放送される、ハロウィンで浮かれた人々。
これだけ大勢の人間が浮かれて馬鹿騒ぎをしているのだ。
1人や2人連れ去ったところでどうと言うことはあるまいと考えたようである。
「うーん、そこまでは分かったんだけど。
それなら他に来てないの?
この2人以外にもいそうなもんだけど」
「怪異界隈にもナワバリがありますからね。
わざわざ日本に来てこう言う行動を取るのはナワバリ荒らしになるわけですよ。
よほどの馬鹿でも無い限り、こういう事はしません」
「つまり、こ奴らは余程の馬鹿という事じゃな」
「まぁ、そういう事です。
ただ、それだけが理由じゃ無いんですけどね」
言いながらも巫女は男達に視線を向ける。
彼らはいまだに呆けた顔で立ち尽くしていた。
「彼らの家は吸血鬼界隈の中でも底辺に位置しています。
言ってしまえば、吸血鬼としての力が弱いという事ですね」
「確かに魅了の力を使ってきおったが、大したことは無かったのう」
「いや、貴女達2人に比べたら、吸血鬼一族なんて烏合の衆ですよ。
こほん……話を戻しまして、そんな中で一発逆転を狙ってやってきたわけですね。
なるべく強い力を持つ女性を選んで連れて行く。
そうして生まれた自分よりも強い力を持つ子供に家の格を上げてもらう……そんなことを考えていたようです」
巫女の言葉に2人は顔を見合わせて納得した表情を浮かべた。
「ああ、だから僕たちが歩いていたら直ぐに食いついてきたわけだ」
「妾達は絶好の囮となったわけじゃな」




