元勇者と魔王のハロウィン手伝い 1
「はい、ということで約束は守ってもらいますよ」
10月も終わろうとしている日、突如として2人の前に現れたのは、神使巫女であった。
「え、何のこと?」
「ハロウィン時期に人手が足りないから手伝ってくれると言ったでしょう。
忘れたとは言わせませんよ」
「あ〜そんなこと言ったっけ」
数日前、巫女にゲストとして呼ばれたユウ。
お悩み相談コーナーだったのだが、その一回目のお便りは巫女による仕込みであり、後輩でもある花鳥風月の訴えでもあった。
女子大生・退魔士・配信者の三足の草鞋を履いている彼女達だが、現在は退魔士の人手が足りていないらしく、配信業がままならない状況であった。
そんな状況を嘆いてか、現状を打破して欲しいという巫女に届いた嘆願書。
退魔士という荒事に対して手を出せる数少ない知り合いと言えばユウとマオであった。
そのため、生配信の最中に手伝いを約束させられたという経緯があったのであった。
「なんじゃ、来ておったのか」
「あ、マオちゃん!
話は通っていますか?」
「まぁ、今日は配信の予定も無いから構わんであろう。
それにしても、以前も手伝いはしたから、今回も同じような方法でいいのじゃろうか?」
前回は様々な道具を借りて、彷徨っている悪霊を片っ端から釣り上げるという方法を取っていた2人。
だが、今年はどうやら事情が違うようであった。
「それがですね……今年はちょっと事情が変わりまして。
以前は日本の霊達の相手をしてもらったわけですが、今回は海外の怪異を相手にしてもらおうかと」
「海外の怪異?
なんでまた……」
「日本と海外ではハロウィンの仕様が違っていた……というよりも、元々は無かったのは分かりますよね?」
「そりゃ、もちろん知っておるぞ。
ハロウィンが普及したのはここ最近じゃからな」
日本で馴染みのないイベントであったハロウィンも、某テーマパークを先駆けにして、新しい商機と見た企業達のプッシュもあり、近年ではすっかり地位を確立するお祭りとなっていた。
「その影響で、日本でもお盆以外にこの世とあの世の境目が揺らぐほどの影響が出てしまったわけで。
その為に以前は日本の霊を相手にしてもらったわけですが……元々が海外のお祭りということで、平和ボケした日本人を狙って本物の怪異が来日しているようなんですよ」
「はぁ?」
「どういうことなんじゃ?」
「実はですね……」




