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新宿にて 2

三人が見上げたモニターは、目の錯覚を利用して飛び出したように見える映像が流れることを自慢としているものであった。


だが、この時は普通の映像が流れていたのだが……


「あれってバーチャルな人気配信者の歌ですよね?」


「船長って呼ばれてる、ものすごく登録者が多い人だね。

こんな新宿ど真ん中のモニターでPVが流れるんだ」


「もはやこの世界もすっかり認知されたものになったのう」


そう言いながら先へと進んでいく三人。


目指す場所は歌舞伎町タワー。


その建物の6階に目指すべき舞台があるのだ……が


「あれ、また別のバーチャルの人の映像が流れてる」


「ここまで来るともはや侵食じゃのう」


「それだけ広がったってことなんですよ」


歌舞伎町タワーの中に入り、エスカレーターで上へと上がっていく途中のモニターでは、また別のバーチャル配信者の歌が流れていた。


流れていたのは歌が上手いことで有名なアイドルの原石な女の子の曲であった。


「秋葉原だけがオタクの街じゃなくなったよね」


「池袋も殆んど侵食されていますよね。

乙女ロードなんて場所もありますし」


「そして次は新宿と来たものじゃな。

この調子ならば、山手線周りは全てアニメに侵食されるのではないか?」


「それは流石に……無いとも言い切れないか」


「何なら山手線の駅全てでアニメの広告が出てる企画とかもありましたからね」


話しながらエスカレーターで6階まで上がっていき、チケットを見せて中へと入っていく。


今回三人が購入したのはS席という高い値段の席になるのだが、どうやら一階がS席で二階がA席という区分らしい。


前からA、Bと数える中で、Q席というかなり後ろの席だったのだが、意外にも舞台は近く、演者の表情まで問題なく見えそうであった。


「後ろの方だったから心配してたけど、問題なく見えそうだね」


「一応オペラグラスを持ってきたのじゃが、必要なさそうじゃな」


「私も問題ないです……ちょっとトイレに行ってきますね」


そう話している間も、席はどんどんと埋まっていく。


驚くことに平日の真っ昼間であってもチケットは完売しているらしい。


「一応当日券枠はあるらしいけど抽選みたいだね」


「予め予約しておいて良かったのう」


「あ、グッズ売り場は既に枠が埋まっているようなので、後は帰りに開けるみたいですよ」


トイレから戻ってきた響子の報告では、開演前のグッグ売り場の人数は決められていたそうである。


グッズを買っている間に舞台が始まってしまっては本末転倒であるので、正しい判断であろう。


こうしてのんびりと待つこと10数分。


「なっつやすみ〜なっつやすみ〜」


遂に舞台の幕が開いたのであった。

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