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新宿にて 1

「いよいよこの日が来たね!」


「待ちに待ったのじゃよ」


「本当に楽しみにしてましたよ」


ユウマオの二人に、隣人の響子を加えた三人がやってきたのは新宿である。


平日の昼間でも混み合っているこの場所にやってきたのは、とあるイベントを鑑賞するためであった。


「SNSでも見た人の感想が流れてくるから、本当にワクワクしてたんだよね」


「やはり評判が良いのかの?」


「私も見ましたけど、去年よりもパワーアップしていると評判でしたよ」


三人がやってきたのは、去年大好評で終わったガールズバンドアニメの舞台であった。


いわゆる2.5次元と言われるものであるが、この舞台はその中でも特に評判が高く、2.5次元の最高峰と噂されることもある。


その1番の理由はライブシーンで演者が実際に演奏を行う生ライブを敢行したことにあるであろう。


通常の場合、スポーツ漫画の2.5次元などを見ると分かりやすいのだが、そのスポーツの道具を持った状態で、ダンスを踊り、歌を歌うミュージカルになりがちである。


この作品でも、ライブのオケを流しつつ、演者が楽器をエアプレーで弾き、歌だけは実際に歌う……それでもお客さんは納得してくれたに違いない。


だが、それを良しとせず、楽器を扱える演者さんを集め、更にコーチを付けて役者の演技指導に加えて楽器の技術指導まで行われていたのだから驚きである。


「お借りした円盤に付いていたメイキング映像を見た時は驚きましたよ。

ちゃんと指導が入って練習してましたからね」


「ね〜でも、よく見るとドラムの人にはあまり指導が入ってないんだよね」


「ドラムと言えばあの金髪の子じゃよな?

素人の感覚でも飛び抜けて上手いのは分かるのじゃが」


「あの人って元々お姉さんがドラムやってた影響で、6歳の頃からドラム叩いていたらしいよ」


「なるほど、やけに上手いと思ったらそういう理由だったんですね。

あの、主演の子もソロのギター弾きとか上手いですけど、昔からやってた感じなんですかね?」


主人公であるピンク髪の女の子はギターが超絶テクの持ち主という設定で、作中でもその技能を発揮するシーンが多い。


そのため、主演の人物にも同様のソロパートが用意されていて、去年の映像ではそのシーンを難なくこなす様子を見ることができたのである。


「あ〜それが、本人曰くギター自体はやっていたけど、ギタリストって呼ばれるようなものじゃないって話らしいよ。

因みにこの舞台以前の経歴が一切不明……これも本人曰く引きこもりだったって話らしいね」


「練習であそこまで上達したということなら大したものじゃのう」


「経歴が不明というのも何だか面白いですね」

 

信号を待っている間、ダラダラと舞台について話していた三人であるが……


「あ、あれって……」


ビルの上にあるモニターの映像に目を奪われてしまった。

千穐楽まで公演を終えられた事、本当におめでとうございます。

舞台ぼっちの4日目、昼の部を観てきましたが、最高以外の感想が出てこない素晴らしいものでした。

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