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マルチバースは失敗だった 2

「心配してた事は全然なくて良かった」


映画を見終わった三人は、とりあえずはトイレへと向かったのであるが、別れる前にユウが呟いた一言がこれであった。


他の2人もそれに頷きつつ用を済まし、適当なカフェに入って感想を言い合うことにしたのである。


「さっきも言ったけど、暴力表現とか下品な下ネタとか、一切の規制が無くて変わってなかったから良かったよ」


「この映画の主人公の売りはバイオレンスと過激な下ネタギャグじゃからな。

存在自体がギャグと言っても過言では無いからのう」


「私は久しぶりに主演に戻ってきたヒーローが良かったですね。

元々が好きで感動的な最期だったのですが、今回戻ってきたストーリーと、最後の感動的な部分はとても満足ですよ」


三者三様の感想ではあるが、共通した答えとして、映画の出来に満足しているという事であろう。


「ほんと、ここ最近は不調だったから心配してたんだけどね」


「あ、始まる前に言ってた話ですね。

どういう事ですか?」


「映画の主人公も話していた事じゃが、元々このヒーローシリーズを作っていた配給会社が権利を売却したんじゃよ。

それで超大手が買い取ったのじゃが……その後の映画の評判たるや散々なものであったな」


「最近流行りの人種の壁を無くそうって運動を積極的に取り入れてね。

その結果、縛りでがんじがらめにされて、魅力のない平坦なキャラとストーリーになっちゃったんだよ」


「挙句にマルチバースと言って、並行世界を取り入れた結果、物語が複雑化と言えば聞こえが良いが、何でもありのご都合主義に変わってしまったのも不評であったな。

今作ではそれをうまく活かしておったがのう」


「そう言えば映画の中で主人公もマルチバースは失敗だったって言ってましたね」


「あれは本当にその通りだったから笑っちゃったよ」


ユウ達の解説の通りに、近年の運動を積極的に用いた結果、ここ数年の映画は大きくコケていた。


権利を買い取った名作を三流に変えてしまう手法から、大作クラッシャーなどと不名誉な名前も付くほどである。


その力量は、あの神作である宇宙戦争すら駄作へと変えてしまうほどであった。


「まぁ、今回は少しはいけるかなって期待もあったんだけどね」


「え、何かあったんですか?」


「ああ、あの株主総会の話じゃな。

確かにあの流れは今後に期待を持てる良い話であったな」

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