平和とスポーツの祭典
「うーん、なんか大変なことになってきてるね」
テレビの画面を見ながらユウが唸っていた。
「何の話……と、これは現在行われているオリンピックかのう」
ユウの言葉にひょいと顔を向けたマオは、テレビ画面に映っている映像を見て全てを察した。
「今のところ、平和の祭典でやってはいけないことをフルコースで行われているし、懸念されていた事柄の消化はまだこれからって感じかな」
「そんなに酷い状況なのかえ?」
「会場は完成してない。
放火によるテロが行われ、開会式も問題だらけ。
おまけに選手村ではこの猛暑の中でエアコンすら無く、食べ物は足りておらず、満足な料理も提供できていない。
日本のダンボールベットを真似て用意したものの、日本とは比べ物にならない低クオリティで安眠も出来ずって感じかな?」
「……耳がおかしくなったのかのう?
スポーツと平和の祭典の説明を聞いていたはずなのに、地獄の一丁目を案内された気分なんじゃが」
因みに駅の放火により、日本チームの移動が大幅に遅れて開会式に間に合わなかったというトラブルも報告されている。
「いや、本当なんだって。
特にご飯は酷いなんてもんじゃないらしく、ご飯が不味いことで有名な国ですら、自国から食べ物とシェフを運んできたんだって」
そう言ってユウがスマホで検索すると、探していた記事はすぐに見つかったらしく、その画面をマオに見せた。
「これは洒落になっておらぬのではないか?」
「今のところ、始まる前から指摘されてた問題の話しかしてないからね。
後は汚すぎる川で本当に水上競技を行うのかっていう疑問も出てきてるみたい」
「そんなに汚いのかえ?」
「大腸菌とかウヨウヨいるみたいだね。
競技が終わった後で、選手たちが病院送り……なんてことにならなければいいよね」
「始まる前でそれという事は始まってからは……っと、そう言えば初めの方に既に問題が起きてるとか言うておったか」
「いや〜本当にこの数日間でよくもこれだけって数の問題は起きてるよね。
今回の騒動を見てると、この間やってた東京五輪って大成功だったんだなって実感するよ」
「あの時も何やら批判は色々と出ておったみたいじゃったが」
「あれは日本を下げたい人たちのやっかみみたいなもんだし、何ならいつものことだから仕方ないよ。
ちょっと師匠にも色々聞いて状況確認してくるから、また夜に話そうか」
こうして2人は一旦別れると、夜に配信でこの事を話す約束をしたのであった。




