安さに警戒を 2
「結局さ、インフルエンサー達が宣伝してたって言っても案件でしょ」
「どういうことです?」
ユウの言葉に響子が首を傾げて疑問を示す。
「えーっと……お仕事って事だよ。
この企業からお金をもらって、自分たちを宣伝してくださいって言われるんだ。
お金もらってる取引先の悪口なんて配信で言えるわけないよね?」
「確かに言えませんよね。
ここでうまく立ち回れば次のお仕事に繋がるかもしれませんし」
「そういう事じゃな。
TVCMほどでは無いにしても少なくない額のやり取りが発生している筈じゃからな。
それを鵜呑みにしてしまうのは危険という事じゃよ」
「中には忖度抜きでガチのレビューをしてください!っていう所もあるけど、そういうのは大抵が小さい会社だね。
こういう大きな会社で多数の人が宣伝してるってのは当てにならないって覚えてたほうがいいよ」
「なるほど、勉強になります」
ユウマオの言葉にうーんと唸りながらも頷く響子。
自分の推し……響子は気付いていないのだが、目の前にいるユウマオが宣伝した商品ならば買ってしまうだろうなという自覚があった為である。
幸い2人はお金に困っていないので、案件が来たらよく話し合ってしっかりとした企画のみを引き受けるようにはしているので、今のところ妙な問題は起こしていなかった。
「金銭トラブルの他に健康被害も確認されておるのう」
「それって海外の食品を買って食べたらって事ですかね……確かに向こうの食品の安全性は不確かなところがありますよね」
「……いや、食べ物ではなく衣料品のようじゃな。
買った服の質が悪すぎて健康被害を被ったようじゃな」
「衣服って……それで健康被害につながるなんて全く想像ができないんですけど」
「実例を挙げると、そもそも購入した時点で衣類に妙な臭いがしておったそうじゃ。
それでも試しに着用してみると、皮膚にアレルギー反応が起こったようじゃな。
そのまま入院する羽目になり、届いた衣類を調べてみると、国で定められた基準の300倍を超える発癌性物質が発見されたそうじゃ」
「はぁ!?
そんな服が流通してるっていうの?」
「うむ、もはや安かろう悪かろうという話で収まるものではないな。
このサイトでは買い物すればクレカが不正悪用され、届いた品を使ったら健康被害を及ぼして最悪入院となる恐れがある。
幾ら元値が安いとは言え、これでは意味が無かろう」
「うーん、やっぱりそうなんですね。
ここは諦めて普通のサイトでお買い物することにします」
「何なら僕たちも付き合うから直接お店にも行ってみようよ」
「本当ですか!
ありがとうございます」
こうして話はまとまり、そのサイトは使わない方が良いという結論に至った3人。
後日、ユウとマオによりあくまで名前は伏せた上で、安さに踊らされないようにという注意喚起が雑談の中でなされ、それに対して云々と頷く響子の姿が見られたのであった。




