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とあるリーダーの回想 2

急遽決まったという二人組のアーティスト。


その2人には見覚えがありました……と言っても、このイベントが始まった時に現れた4人組の女性という、非常に目立つ集団だったからです。


その中の2人、ごりっごりにロックな格好をした女性と、軽やかなワンピースを着た場違いなお嬢様のような女性。


ワルとおじょうという、ふざけているけれども、これ以上ないほどにピッタリなコンビ名の2人がステージに上がります。


しかし、せっかくピンチヒッターになってくれたにも関わらず、客である親御さん達はバーフロアの方へと移動してしまったことに申し訳なく感じていたその時……衝撃が走りました。


恐らくはワルさんだと思われる女性のギターソロが鳴り響きます。


その音の圧力は否が応にも人を惹きつけ、目線を釘付けにしました。


和やかに会話していたはずの親御さん達までもが、モニターの方に顔を向けて固定されてしまっています。


ここまで攻撃的な旋律を奏でる相手に対してどのように歌い上げるのだろうか?


ついそう思ってしまった瞬間、ふわりと優しく包み込むような歌声が辺りを包みました。


攻撃的な旋律と優しい歌声……二つの相反するものが何故か上手く絡み合って耳に届き……気が付けば私は、いえ、私達はホールの方へと移動していました。


そこからの盛り上がりは夢の中の出来事のようでした。


一部の親御さんはロカビリー好きだったのか、この旋律にノリノリになってしまい、ホールでステップを踏んで踊り始めます。


私たちのグループの何人かも憧れの様子で2人の様子を見つめており、そして一部のメンバーはこの後に私達がステージに上がらなければいけないという現実を思い出して顔を青くさせていました。


私は……どちらの顔をしていたのでしょうね?


ただ、胸の中から込み上げてくる熱いものが止まりません。


案の定、その後のステージはボロボロでした。


私たちの親達ですら、先ほどのステージで体力を使い果たしたのか、メインが終わった後のオマケのような反応しか出来ません。


社長はこのライブハウスの店長に文句を言いに行ったようですが、元々の落ち度はメンバーを用意できなかったこちらであり、急遽アーティストを用意してくれたライブハウス側はお礼を言われこそすれ、文句を言われる筋合いはありません。


リハの時間する取れない三流アーティストなんて勝手に勘違いしたのも社長ですからね。


当然ながらこの文句は的外れでした。


そして、ライブハウスは横のつながりが強いので、こんな失態が知れれば、それこそ今後ステージを引き受けてくれる箱は無くなります。


こうして、この日は事務所の大失敗となりそこから一ヶ月後……私はアイドルグループを辞めて独り立ちする決意を固めたのです。

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