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ライブハウスへ行こう 9

「さっき説明した通りに主催者はアイドルグループを作ったレッスンスタジオな訳っすよ。

それで、自分たちのアイドルを主役にする為に、わざと学生レベルのアーティストしか呼んでなかったんス」


「ああ……だから最初の子達も」


最初に出てきた男の子2人は、一生懸命に演奏しようと頑張ってはいたが、ステージ自体に慣れておらず、緊張からMCで詰まったり、演奏のミスも多く見られた。


恐らく、今回ドタキャンしたというアーティストも似たようなレベルだったのであろう。


「主催者としてはあくまで自分達の客……つまりはアイドルユニットの親御さん達を満足させる事が出来れば良かったわけじゃな」


「そういうことですね。

彼女達を主役にしたライブを作ることが出来れば大成功。

ついでに前座や休憩の時間に売れないアーティストを捩じ込むことでノルマ代か、ノルマを達成したチケット代による小銭稼ぎをしていた訳です」


「ああ、そういう事だったんだ」


ここまでの話でようやくユウも事態を飲み込めたようであった。


要は今回のイベントはアイドルグループの保護者を対象にした金稼ぎ兼アピールの舞台だったのである。


わざとレベルの低いアーティストを呼ぶ事で、相対的にアイドルグループの印象を良くし、自分達のレッスンの正しさをアピールする舞台……それがこのイベントの正体だったのだ。


また、アイドル達も現実を知らず、胃の中で夢を見続ける存在……その状況を維持するために必要だったイベントだったのだろう。


それをナコと八起子という本物が全てをぶち壊していったのだ。


「やはりあの揉めそうな勢いの男性は主催者じゃったか。

あの店は大丈夫なのかえ?」


「店長も仕事だから引き受けてはいたみたいっスけど、飽き飽きしてたみたいっスからね」


「それにアーティストを用意できなかったのはイベンター側の不手際ですからね。

店長は偶々ギター持ってる人が入ってきたからお願いしてイベントの穴埋めをしてやった……この立場を崩さないと思いますよ」


「まぁ、自分達がいたのは本当に偶然っスからね。

それで今後あのライブハウスを使うかどうかは主催者側の問題っス」


「昼間って割と死んでる時間帯ですからね。

そこでイベント入れてくれるだけでいいお客さんではあるんですよ。

でも、あくまで夜の方がメインですから、そこまで痛手というわけでもないんです」


「なるほどのう」


2人の説明に納得したように相槌を打ち、ユウとマオも届いたドリンクに口をつける。


こうして、カップの中が空になるくらいまで会話を楽しみ、4人は其々のカップリングに別れて解散したのであった。


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