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ユウと風の修行

「何を出しても弾かれるんだけど……」


「ほらほら、まだまだ全然だよ。

もっと打ち込んできたまえ」


「いや……ちょっと休ませて」


肩で息をしながら、青ざめた顔でその場に座り込む風。


ここは次元の狭間にある空間。


かつてユウとマオが彷徨い歩き、現在はルーナの力を経て自由に行き来できるようになった場所である。


この場所では壊れるものが一切ないため、ユウとマオは運動不足の解消がてらにここで模擬戦や修行もどきを行っていた。


やがて知り合った花鳥風月の中でも、特に近接戦闘メインの風は、ユウに師事して特訓をつけてもらっていたのだった。


そんな不定期に開催されている特訓なのだが、時期が悪かったのであろう。


風は己の技を全て見切られて弾かれ、バランスを崩すように仕向けられて何度も転倒していた……そう、某ゲームのように。


最初の方こそはあらゆる手を使ってユウに一本打ち込もうと躍起になっていたのだが、どの技も軽く弾かれ、決して痛くはないがバランスを崩すような反撃を受け、転倒すると死んだかと錯覚するような殺気を浴びせられる。


これで心が折れない人間がいるのならば教えて欲しいと、風は心の中で思うのであった。


「時期が悪かったのう。

ほれ、ユウは最近こう言う弾く系のゲームにハマっておるからのう」


「ああ、そうだったんだ。

通りでなにをやっても弾かれると思った」


「これならあのゲームの隠しボスの方が手強かったよ」


「いや、ゲームの動きを完全に再現できるユウさんが異常なんだよ」


「風も最初の頃に比べれば随分と腕を上げておるんじゃがのう」


「そうなの?

ユウさんと差が縮まっている気が全然しないんだけど」


先ほどの風の動きを思い出しながら、マオがしみじみと言うと、それまで仰向けに寝転んでいた風がガバッと起き上がった。


「そりゃ、ユウの方が成長しておるからのう。

ゲームの動きを戦闘に取り入れ、お主との修行で最適化しておるんじゃよ」


「それってユウさんは僕以上のスピードで成長してるってこと?

なんかズルくない?」


「ほら、僕って師匠がいない我流だったから。

こうして尊敬できる師匠に出会うとまだまだ伸び代があるというか……」


「ゲームが師匠を実践できるのがズルイいと思うんだよね。

……まぁ、でも僕も頑張ればまだまだいけるってことだよね。

よーし、もう一本お願いします!」


「どんとこい!!」


こうして修行を再開する2人の姿を見たマオはポツリと呟く。


「風もこの世界では既にトップクラスなんじゃろうがな」


そんな呟きが聞こえていない2人の修行は更に熱が入っていくのであった。


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