ウィッチ・ブロウ
「あいたたたたたた!!」
「あ〜ダメダメ。
大人しく横になってないと」
「必要なことは妾達がやるから、大人しくしておくのじゃ」
「うう……すいません」
♢ ♢ ♢
ある日の昼過ぎ、ユウマオの2人は隣に住んでいる響子の家へとやってきていた。
ランチにでも誘おうと連絡してみたのだが、返ってきた答えは今は動けないというものであった。
2人はお隣同士で仲良くしていることと、響子が慣れない都会での一人暮らしという観点から合鍵を預かっていた。
そのため、合鍵を使って中に侵入したのだが、2人が見たのは腰を押さえてうずくまる響子の姿であった。
「うむ……間違いなくぎっくり腰じゃな」
「重いものを持ったりはしていないんですけどね」
「ぎっくりと要は炎症だからね。
何がきっかけで発症するか分からないんだよ。
重たいものを持とうとして、無理して痛めるってのが多いのは事実だけど」
ぎっくり腰……正式には急性腰痛症と呼ばれる症状である。
ユウは炎上だと断言した通りに、響子の腰痛の原因は炎症なのだが、ぎっくり腰は原因不明になる場合もあるので素人診断は危険なので注意してもらいたい。
そんな理由から本日は響子の世話を焼く事を決めた2人。
響子をベッドに運んだ後は買い出して湿布と簡単に栄養の摂取できる食べ物を複数準備した。
寝ている体勢からほぼ動けないため、ゼリー食品が主である。
ユウの持っている異世界の薬や、マオの魔法ならば即座に完治も出来るのだが、事情を知らない響子に使うわけにもいかないので、この世界のマニュアルに則った治療行為である。
「あ、この湿布って冷たいんですね」
「調べて見たのじゃが、発症直後は冷湿布で冷やした方が良いらしいのう。
2〜3日経てば痛みが治ってくるはずじゃから、その時はこの温湿布に変えるのじゃ」
基本は炎症であるために発症直後は、温めてしまうと悪化してしまう。
そのために発症直後は冷やし、痛みが和らいできたら温めて血流を促すというのが一般的である。
「なんだか少し楽になって来た気がします」
「冷やして炎症を抑えてるからだろうね。
でも、調子に乗るとすぐに痛みがぶり返すから、3日間くらいは安静にしてないとダメだよ」
「暫くは様子を見にくることにするからのう。
それとは別に、隣同士なんじゃから何かあれば直ぐに連絡してくるのじゃぞ」
「うう、本当にありがとうございました」
こうして良き隣人に恵まれたことを感謝しながら、しばらく安静にしておこうと誓う響子であった。
手には配信サイトを表示したスマホを持ちながら。
ぎっくり腰になりました……作者が。




