桜の季節にはやや早い 2
近くにある、新鮮な野菜を推しだしているしゃぶしゃぶチェーン店で食事を済ませた3人。
店を出る頃にはあたりは陽が落ちて、すっかり暗くなっていた。
「だいぶ暗くなってきたね」
「まぁ、暗いとは言うても都会はあちこちの灯りのお陰で視界に困るという事はないがの。
駅近くの大通りならば尚更じゃな」
「私の地元だったら真っ暗で灯りを持たないと危ないですよ。
まぁ、今日はお月様がまんまるだから少しはマシだと思いますけど」
空を見上げれば満月……にはやや欠け始めている月が辺りを照らしていた。
まさにゴールデンタイムともいう時間で、街には呼び込みが彷徨き、これからいく店を探している団体が行き交う中を、3人は上野公園目指して歩いて行く。
「そう言えばあそこのネオンがキラキラしてる所ってどんな感じか知ってます?
昼間通りがかる事はあるんですけど」
そう言って通りがかった先にある通りにあるデカデカとしたネオンを指差す響子。
そこには大きく仲町通りと書かれていた。
「あ〜あそこはねぇ……ここから見える通りの場所だよ」
ユウが話す通りに、道の先ではドレスを着て着飾った女性や、スーツを着て髪の毛をツンツンに立たせた男性など、ある一定の職業に就いていると思われる人物が多数いた。
「見える通りって……ああ。
つまり私の住んでいた所で言うとススキノみたいな場所ですかね」
「そう言う事じゃな。
今日は妾がおるから声をかけられる事も無いであろうが、1人で出歩く時は注意するのじゃぞ」
本日のマオは子供の姿であるため、幾ら響子が大人の女性と言えども声をかけてくるキャッチはいない。
だが、1人の時にはどうなるか分からないために心配して注意を促すのであった。
そんな話をしながらも歩みは止めなかった為、あっという間に目的地の上野公園へとたどり着いた。
入り口の提灯の壁にも明かりが灯って辺りを明るく照らしていた。
中へと進んでいくと、通路沿いに設置された提灯も明るく桜を照らしてくれている。
まだ満開とは言えない桜だが、提灯の灯りと月の光がその姿を彩り、その美しさを演出してくれていた。
「綺麗ですね」
「うむ、綺麗じゃな」
「通路の柵が景観を台無しにしているけどね」
ユウの話す通りに通路には柵が敷き詰められ、芝生の中には入れないようになっていた。
「今の時代、花見も中々に出来ぬと言う事じゃな」
「外で集まってお酒飲んでるだけで白い目で見られちゃうもんね」
「時代とは言え寂しさは感じますが」
「まぁ、仕方ないじゃろうな。
無用のトラブルは避けれるため、妾達のような女だけの集団にとっては良い事じゃろう」
こうして3人はのんびりと夜桜を楽しんでから帰路に着くのであった。
また、満開の時期に合わせて花見に行くことを約束して。




