月を見上げる蟻 2
とりあえずは鍋の出汁を定番の醤油に決めて3人前頼み、各々が好きなソフトドリンクを頼んで鍋の到着を待った。
因みに今日のマオはいつもの子供の姿のままである。
以前の居酒屋では飲み過ぎたと反省しての事で、自省が出来る女なのだ。
「ここ、立地に比べるとお値段が良心的だね」
「確かに、東京の感覚で見ると安く感じてしまいますね」
鍋は一人前が出汁によるものの2000円前後。
野菜を追加する場合は数百円。
その他のサイドメニューも売りにしている馬刺しを除けば、全てが数百円程度。
池袋の駅に立つデパートのレストランフロアという立地を考えるとかなり格安な気に思える。
「妾たちはどちらかというと野菜を食べに来ておるからモツの追加は要らぬしのう。
別に値段が高くても気にはせんが、安いなら安いに越したことはないのじゃ」
こうして運ばれてきた野菜たっぷりの鍋を食い尽くし、更に野菜の追加を2度もしてから3人は締めを選ぶ事にした。
「ちゃんぽんとかもあるけどどうする?」
「ここはやはり雑炊であろうよ」
「中々濃い味になりそうですけどね」
「締めはそのくらいでなくっちゃ」
という事で締めに雑炊セットを頼み、自分達で作る気満々だった3人だが、ここで予想外の出来事が起こった。
店員が鍋を回収していったのである。
「あれ?ひょっとして向こうで作って持ってきてくれるのかな?」
「そうなのでは無いか?
こういうタイプは初めてなので何とも言えぬが」
「調べてみたらこの店の雑炊は一度鍋を回収して、作って持ってきてくれるみたいですよ」
「へぇ〜そういう店もあるんだ」
「ひょっとすると一定以上の格がある店では普通のことかも知れぬのう」
そんな事を話しながら待つ事数分。
店員が改めて鍋を運んできてテーブルの中央に配置した。
その中にはきれいに敷き詰められた雑炊、その上には海苔と白胡麻、更にはネギが追加されて配置されていた。
「やはりプロが作ると一味違うのう」
「これはとても食欲をそそられますね」
「絶対美味しいやつじゃん」
3人はそれぞれに感想を言い合った後、自らの器に装ってから口をつける。
3人ともに美味しいという感想しか出てこず、あっという間に鍋の中は空となってしまった。
「いや〜満足満足。
寧ろ食べすぎてちょっと苦しいかも」
「私も……ちょっと近くのカフェとかで休憩してから帰りません?」
「うむ、その方が良いであろうな」
ついつい食べ過ぎてしまった3人。
彼女達は近くのカフェで休憩しながら雑談し、程よくお腹が楽になったところで帰宅するのであった。




