巫女さんがやってきた 1
「いや〜すいませんね、突然押しかけてしまって」
ある日の午後、ユウとマオの家に押しかけてきたのはいつもの響子……ではなく、2人の先輩に当たる神使巫女であった。
彼女は直接訪れなければいけない打ち合わせがあった為に東京へとやってきて、ついでに2人の家にやってきたのであった。
「全然気にしなくて良いよ」
「それにしても災難であったのう」
「いや〜向こうも被害者ですから文句は言えませんけどね。
お二人が宿を提供してくれなかったら会社に泊まるしかないところでしたよ」
巫女はこちらに来る時に勿論宿を用意していたのだが、何やらトラブルがあったらしくとても客を泊めれる状態ではなくなってしまったらしい。
その事を知った社長の里中は、自分の伝で宿を用意しようとしたのだが、そこに偶々事務所に来ていたユウとマオが自分の家に泊まればいいと提案したのであった。
「そう言えるのは巫女さんの人間が出来てるからだと思うけどね」
「当日にドタキャンであるからな。
宿の方で代わりを用意しておくといった対応をするのも当然じゃと思うがな」
「まぁまぁ、大変な時に無理な事を要求してもしょうがないですから。
私としてはその代わりにお二人の家にお招き頂いたのは役得という他ありませんよ」
そう言ってぐふふと笑う巫女であったが、もはや長い付き合いになるユウとマオには、この先輩が2人に変な気を遣われないためにこのような事を言っているのは明白であった。
「客間は用意してあるから、ここを使って貰ったらいいよ」
「ここって確かネコリさんがしばらく住んでた時に使っていた部屋でしたっけ?」
「そうじゃな。
その後は客間としてゲストを泊める時に使っておるから、遠慮することはないぞ」
「それじゃ失礼しますね」
そう言って巫女は客間へと入り、スーツケースを広げて中の衣類を整理していった。
「僕はその間にお風呂沸かしてくるから。
巫女さんも疲れてるだろうしね」
「うむ、妾は近くの店に予約を入れておくとするかのう」
巫女を客間へと残し、居間へと戻ってきた2人は、遠くから来たゲストをどうもてなすかで話し合い、即座に動いていた。
本人はおくびにも顔に出さないのだが、トラブルで精神的には疲れているだろう。
そう思った2人の労い計画がスタートしたのである。




