大物選手の結婚報道と二刀流 1
閏年の日にしかやってこない特別な日。
いつもの2人に加えてお隣の響子を含めた3人でぼんやりとニュースを眺めていた所、とてつもないビッグニュースが飛び込んできた。
「え!?あの二刀流の選手が結婚したの?」
テレビでは現在メジャーでも大活躍している、今や世界で一番有名な日本人と言っても差し支えない選手の結婚報道で沸いていたのであった。
「おお、これはめでたい話じゃな」
「私、野球は良く分からないんですけど。
この方って二刀流?と呼ばれて盛り上がっていましたよね……野球で二刀流ってどういう事です?
バット二本持つとか……」
「いや、流石にそんな人はいないから。
二刀流ってのはバッターとピッチャーの両方で活躍する人の事だね」
ユウは響子のやや的外れな意見に呆れつつも、知らないものは仕方ないという心持ちで説明を始めた。
「通常はこの二つを兼任できるものはおらぬ。
ピッチャー以外の8つのポジションのセンスが打撃で活躍し、ピッチャーは打てなくても仕方ないとされておるのう。
その為にパ・リーグではDHというシステムで、ピッチャーの打順で代わりの者が打席に立つというシステムがあるのじゃよ」
ユウの始めた説明に必要と思われる補足を入れるマオ。
こうして大物野球選手の結婚報道をきっかけにして、野球に対して無知な響子に対する講座が急遽始まったのであった。
「えーっと、ピッチャーというのは投げる人のことですよね?
そんなに打つ人……ええっと、バッターでしたっけ?
この両立は難しいんですか?」
「簡単に言うと練習量が違うんだよ。
バッターの人は当然他の守備練習も行うんだけど、バッティングと守備の練習足してもピッチャーの方が大変なんじゃないかな?」
「それに加えてピッチャーは利き腕をひたすらに酷使する為に消耗が激しいというのも挙げれるであろうな。
この事からピッチャーはバッティング練習などやっておる暇も余裕もないんじゃな」
この練習をやっている暇がないという理屈は、あの実況で有名な育成ゲームをプレイしてみるとよく分かるだろう。
この大物選手をモチーフにした基礎能力を持つ選手を育成する機会もあるのだが、どうやっても彼のような選手が育つ事はない。
そういった意味で、彼はフィクションよりもリアルの方が優った人物と言って良いだろう。
「つまり、普通では絶対にあり得ないことを成し遂げているからこそ、この方は素晴らしいということですね」




