マオ、痴漢冤罪に遭遇する 3
「最近、痴漢冤罪をでっちあげて相手を恐喝して金稼ぎをしているという事件が発生しているのです。
示談という形で示談金を受け取っているようですね」
「つまり、この男性は偶々悪いやつに引っかかってしまったということじゃな」
「ええ、災難でしたが毅然とした態度で否定してくれて良かったです。
認めてしまうと私たちが介入した時も味方する事は出来ませんからね」
「あ、いえ、自分1人だけなら訳も分からずに認めてしまっていたかもしれません。
この女性が私はやっていないと証言してくれたおかげですよ」
「貴女が無罪を証言してくれたのでありますか!
同じ女性として貴女の勇気ある行動に敬意を表するであります」
二人組の警官の婦警さんの方がそう言ってマオに頭を下げる
。
その礼を受け取りながら、マオは冤罪が晴れた男の方へと向き直った。
「お主はやっていないことはキッチリと否定するのじゃぞ。疲れたところの隙を突かれたとはいえ、やっていないものをやってないと主張し続けるのは大事なことじゃからな」
「はい、肝に銘じておきます!」
「格好いい女性であります!
いざという時は証言しづらいと思うでありますが、そこまでハッキリとこの人はやっていないと言えるのも凄いでありますね」
婦警が憧れの眼差しでマオを見つめると、マオも自信満々に言葉を返す。
「当然じゃな。
そもそも妾が前にいるのに、あの女性の方に手が伸びる筈がなかろう」
「ま、まぁ……確かにそうですね」
「先輩、不謹慎でありますよ!
……気持ちは分かりますが」
「まぁ、妾に手を出してきたらタダでは済まぬがのう。
と言うわけでもうそろそろ妾も行って良いかの?」
「はい、ご協力ありがとうございました!」
「お気をつけて、であります!」
「本当にありがとうございました」
こうしてマオは階段を降りて改札へと向かっていく。
本来降りる駅ではなかったのだが、これも何かの縁と普段降りない街を見て回ろうと思ったのである。
そして、あわよくばで良ければもう一つの目的も達せられないかと思ったのである。
こうして、改札を出て街へと繰り出したマオ。
「……あの女、余計な邪魔しやがって」
そんな彼女を遠くから憎々しげに見つめる視線があることにに気付かぬふりをしていた。




