江戸時代から続くルーツ 1
ある日、2人が東京駅の日比谷線に乗っていた時のことであった。
とある駅に停車した時にふとユウが頭に浮かんだ疑問を口にしたのである。
「そう言えば八丁堀駅って聞くと、仕事人の人を思い出すんだけど……なんであの人って八丁堀ってあだ名だったの?」
時代劇でも人気のシリーズを借りてある程度見ていた2人。
そこで出ていた登場人物の1人が八丁堀というあだ名だったのを思い出したのであった。
「それはこの八丁堀に住んでおったからじゃのう。
北町奉行所の与力・同人の寮が八丁堀にあったのじゃよ」
「ああ、確か同心だったもんね。
……んん、あれ?
与力同心ってセットで覚えてたけど、与力と同心って違うの?」
マオが言葉を区切った為に覚えた違和感。
その意図を察したユウの疑問にもマオはスラスラと答えていった。
「うむ、分かりやすく言うと身分じゃな。
与力は同心の上の存在。
中級武士と下級武士のようなものじゃ」
「じゃあ、八丁堀の人って本当に下っ端だったんだね」
「うむ、因みに与力は馬に乗ることを許されておるが、同心は馬に乗る事は出来んかったりするのう。
この時代に馬に乗れる武士は相当に身分が高いと思って良いぞ」
「ああ、じゃあ火付盗賊改方の長官の人ってそれだけ偉いんだ。
よく現場に馬に乗って駆けつけてるよね?」
マオの語る内容に ユウはもう一つの人気時代劇シリーズを思い出した。
あちらのシリーズでの主人公はよく馬に乗っていたし、記憶が正しければ殿様などと持ち上げられる事もあったはずであった。
「うむ、そう言う事じゃな。
それと八丁堀もそうじゃが、割と江戸時代から変わっておらぬ地名もあってのう。
そもそもが時代劇の舞台は墨田区側になりやすいのじゃが、あの辺りは特に今と地名が変わっておらぬ印象じゃな」
「そう言えばスカイツリーのある押上も昔は押上村だって聞いたことがあるような」
「火付盗賊改方のルーツを辿っていくと行き着く場所ではあるのう。
そう言えば墨田区では江戸時代からまつわる七不思議をテーマにしたゲームもあったのう」
「ああ、あのめちゃくちゃシナリオが面白かったゲームだよね。
でも、そっかぁ……こうして考えると江戸時代からずっと繋がってるんだって実感できて面白いね」
「まだ時間はあるのじゃし、折角じゃから今日はその辺りを散歩してるみるかのう」
こうして2人は電車を降りると、スマホで検索して適当なルートを洗い出していったのであった。




