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見覚えのある夫婦 3

1時間ほどしてから折口家からお誘いの連絡が来たので、2人は早速隣の部屋へと向かった。


「お二人とも待ってましたよ。

さぁ、上がっていってください」


響子に招かれて折口家に入ると、既に良い匂いがしてくる。


「うわぁ、美味しそうな匂いだね」


「これは期待できそうじゃのう」


響子の案内でリビングへと向かうと、そこには既に響子の両親がおり、変わった形の鍋で肉を焼いているところであった。


「2人ともいらっしゃい。

直ぐに焼けるからくつろいでいてくれ」


「お野菜もたくさん焼いてますからね」


そう言って変わった鍋で肉を焼いている2人の元に興味津々なマオが近づいていった。


「ほう、これがジンギスカン鍋というやつじゃな」


「おや、詳しいね。

中央部が浮き上がっているのがこの鍋の特徴でね。

中央の山部分で肉を、外周部の平坦な溝の部分で野菜を焼くんだよ」


「そうする事で肉の油が野菜の味付けになる事を狙って作られのよ。

羊と野菜の全てを余す事なく頂くように作られた鍋。

それがジンギスカン鍋の特徴なのよ」


「なるほどのう」


興味深けに頷くマオを他所に、ユウは響子の方に挨拶をしていた。


「今日は招いてくれてありがとう」


「いえいえ、この程度では普段のご恩の幾らかも返せてないですから」


「それにしてもジンギスカンの材料なんてこの短時間でよく用意できたね」


「あはは、実はあれって父と母が牧場から持ってきたものなんですよね。

何で肉も野菜も自家製です」


「はは、肉まで自家製ってのはこっちに来てから初めてだよ」


「こっち……ですか?」


「あ、えっと、東京に来る前ってことね。

前に旅してた時に田舎でご馳走になったことがあったんだよ。

まさか、目の前で解体し始めるとは思わなかったけど」


「それは中々強烈な経験をしましたね」


ユウの言葉に響子もなにかをおもいだしたのか、思わず顔を顰めてしまう。


「まぁ、こういう命を頂いているってのは誤魔化しちゃダメだよね」


「そう言ってもらえると、こういう商売している身としては助かります」


「おーい、2人ともそろそろこっちに来ないか!」


2人が笑い合ったタイミングで折口父から声がかかる。


ユウと響子は頷きあうと仲良く良い匂いの充満している場所へと向かっていくのであった。

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