見覚えのある夫婦 2
「あ、お帰りなさい。
随分と時間がかかっ……」
2人が家へと戻ってくると、当たり前のような顔で出迎える人物がいた。
そんな彼女はユウとマオが連れている夫婦の顔を見た瞬間にパクパクと口を動かしながら固まってしまった。
それは夫婦も同様だったようでこちらの2人も、出迎えた女性の顔を見て驚いて固まってしまった。
「うむ、やはりそういうことじゃったな。
ほれ、響子よ……そこで固まっておっても仕方あるまい」
「お父さんとお母さんもせっかくの再会なんだし、こんなところで止まってないで上がって上がって」
そう、出迎えたのは2人の隣人である折口響子であった。
そして、ユウとマオがすでに予想していた通りに、2人が途中で出会った夫婦というのは響子の両親だったのである。
まだ動揺している三人をリビングに招き、とりあえず夫婦と響子を対面するように座らせ、2人は響子を挟むように腰掛けた。
「な、なんで2人が東京にいるの!?」
「そんなんお前が直ぐに東京に戻ったからに決まっているだろ」
「この人ったら、悪い男に誑かされてるんじゃないかって心配したんだよ。
普通ならもう少しのんびりして行くはずだって」
「彼氏なんて出来てないって話したじゃない!
わ、私の交友関係はユウちゃんとマオちゃんだけなんだから」
「それは流石に悲し過ぎんか?」
家族の会話と見守っていたマオであったが、流石に見逃せなかったのか思わずツッコミを入れてしまう。
「まぁ、その話は本当なんでしょうね。
寧ろこんないい子達にお世話になってるなんて安心しちゃったわ。
ねぇ、あなた」
「う、うん、その通りだな。
彼女達は私達が迷って困っていたところに声をかけてくれてな。
ここまで案内してくれたんだよ」
「その辺りは流石親子って感じだよね。
まさか親子揃って初対面が道案内で同じ場所に案内するとは思わなかったよ」
「ゆ、ユウちゃん、その話は……」
「おや、中々面白そうな話だね。
ユウちゃん、その話を詳しく聞かせてくれないかい?」
ユウの言葉にニヤリと笑ったお母さんの言葉で、響子が東京駅で迷っており、道案内した結果このマンションに辿り着いた事を説明した。
「ふーん、そうだったのかい。
2人には本当にお世話になってしまったね」
「このお礼は是非させてくれ!
響子、お前の家の台所を借りるから手伝え。
準備が出来たらお呼びするので是非招待させてくだされ」
「え、ああ、なるほど。
私も2人には恩返ししたいからいいよ。
準備が出来たら私の方からお声がけさせてもらいますので、それまで待っていてください」
そう言い残すと折口一家はバタバタと隣の部屋、響子の家へと移動していった。
「お礼とは一体なんじゃろうな?」
「何となく予想は付くけど….美味しいものにはありつけそうだね」
こうして2人は声がかかるまで時間を潰しながら待つことにしたのであった。




