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意外な2人の新年の挨拶 3

「そう言えばっスね。

さっき話に出てきてたコンビニが年始に人が足りなくて手伝ってもらえないかと聞かれたんスよ」


「ふむ、それで行ってきたのか?」


「ナコったら人が足りない辛さは分かるから放っておけないって手伝いに行っちゃったんですよ」


「まぁ、マスクで顔は隠せるっスし、マスク越しなら声も伝わりづらいっスからね。

こうしたら分かりづらいっスよね。

あとはこれにメガネっスかね」


そう言ってナコがポケットからマスクを取り出して装着すると、目元以外がほとんど隠れるので判別しにくくなる。


その目元も眼鏡をかける事で極力印象が薄くなっていた。


「まぁ、それなら万に一つも身バレする事は無いんじゃない?

年始はやっぱり暇?」


「暇は暇なんスけどね……春先に変な人が増えるってのは嘘っスね。

一番変な人が増えるのは間違いなく年末年始ッスよ」


「そんなに変な輩がいたのかえ?」


「コンビニバイトは高1からやっていたから長いんスけどね。

それでもあのクレームは初めてっスよ」


「私もナコが帰ってきてから話を聞いた時には驚きましたね」


「え、それはちょっと興味があるかな」


ユウはお代わり用に急須に焙じ茶を入れてから席へと着き、ナコの話に興味を示した。


「自分は普通に接客してたんスけどね。

その客が急に言い始めたんスよ……ケースのハッシュドポテトの色が変だって」


「えっと……ハッシュドポテト買ってから色が変って言ってきたってこと?」


「いや、全く購入なんてしてないんスよ」


「色は確かに変じゃったのか?」


「それも人の感じ方によるとしか言いようが無いっスね。

元々自分が働いているコンビニのハッシュドポテトって規定の時間通りに揚げると黒くなりやすいんス。

ただ、色がはっきり付いているだけで品質にも味にも問題はないっスよ」


「本当に首を捻る話だね」


「それで、実際にこんなもんだって説明したら絶対に違うって言い張るんスよね。

で、挙げ句の果てには本社にクレーム入れるって帰って行ったんスけど……購入もせずに、フライヤーケースの中の色が変だから本社にクレームの電話入れるなんて言う人初めて見たっスよ」


「それは確かにそうであろう。

本社の方でも購入してもいない商品の色が黒い気がする。

あんな物置いている店はおかしい何て言われても困るであろう」


「おかしいのは貴方の目と頭ではって言われて終わりですよね」


なんとはなしに呟いた八起子の言葉に全員の視線が集まる。


「えっ、何か変なこと言いました?」


「いや、僕もそう思うけど、まさか八起子の口からそんな過激な意見が出るとはのう」


「よっぽど腹に据えかねておったのじゃろうな。

妾なら、それは貴方の意見ですよねとテンプレで返すかのう」


「あ……確かに言いすぎたかも……」


「よいよい、どうせそのような輩が被害に遭ってないのにケーキ屋に電凸をし、熊の駆除に文句を付けるのであろうよ」


「まぁ、商品が手元にあるならともかく、買ってないから証拠も何もありませんから大丈夫っスよ。

貴重なご意見ありがとうございますって所っスかね……っと、もうそろそろ自分たちは失礼するっスね」


「今から初詣に行ってきますので」


「そうであったか。

人混みには気をつけてのう」


「また好きな時に遊びに来ていいからね」


「はいっス。

ナコの喉の件もありがとうございましたっス」


「このご恩はいつか返させて貰いますね」


こうしてナコと八起子の2人は仲睦まじげに手を繋ぎながらユウ達の家を後にしたのであった。

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