意外な2人の新年の挨拶 2
「しかし、喉を潰すまで歌うとは……普段のお主からは考えられぬのう」
「今回の年末に向けてナコとは年始からずっと準備していたんです。
その気持ちがつい、声のテンションに乗っちゃって」
「いや〜自分もその熱量に乗せられちゃったんスよね。
本来は止めるべきだったんスけど……」
「まぁまぁ、評判はかなり良かったみたいじゃん。
結果的には僕たちの所に来て回復もしたわけだし、結果オーライって事で。
はい、お雑煮もどうぞ」
そう言ってユウは全員の前にお雑煮の入った器と、ほうじ茶の入った湯呑みを置いていった。
「何から何まですいません。
実は年末年始はずっと忙しくて……初めてお正月らしいものを食べます」
「おせちは買うことも出来るっスけど高いっスからね。
あれ、そんなに好みの物が入ってるわけじゃないっスし」
「まぁ、確実に好き嫌いは分かれるラインナップじゃからのう。
魚が食えぬものなど殆ど食べれぬのではないか?」
「イメージだけど、魚か豆か蓮根って気がするよね。
まぁ、最近ならお肉を入れてるものもあるとは思うけど」
「確実に需要は無くなってるっスよね。
自分が働いていたコンビニの店長もボヤいてたっスよ。
こんなに高いのにこの内容じゃ誰も買わないって」
「正直な話、今ならスーパーでおせちの具材別に売ってますからね。
全部一緒くたに入って高いおせちセットを買うくらいなら、自分の好きな具材だけ買った方が食べれるし安上がりな気がしますよ」
「そりゃそうだよね……おかわりいる人?」
ユウがそう尋ねると全員が無言で器を差し出してきた。
「はは、ちょっと待ってて」
そう言って全員……空になった自分の器に重ねて回収し、台所へと向かうユウ。
「いや〜どんどん嫁力高くなってないっスか?」
「お雑煮、びっくりするくらい美味しかったです」
「うむ、自慢の嫁じゃな」
「さっすが熟年。
その辺りで恥ずかしがったりはしないんスね」
「お主らも常に自然体で支え合っておる辺り、熟年の雰囲気が出ておるではないか」
「ナコは誰にも代え難いパートナーですよ」
「そうっスね。
まさか、ここまで合う人間と出会えるとは思わなかったっス」
「なーに、側から聞いていて恥ずかしい話してるの。
はい、これお雑煮のお代わりと、ついでにお茶も注ぎ直してきたから」
戻ってきたユウは赤面する……訳でもなく、普通の態度で全員の前にお雑煮の器とほうじ茶の入った湯呑みを再配置していったのであった。




