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意外な2人の新年の挨拶 1

「明けましておめでとうっス!」


「…………」


その日、新年の挨拶にやってきたのは後輩である白船ナコと七転八起子の2人であった。


元気に挨拶するナコと違い、八起子はマスクをした状態で何も語らずに頭を下げるのみ。


「明けましておめでとう」


「それで、八起子はどうしたのじゃ?」


「ああ、実は自分たちは年末は年越しライブをやってたんっスよね」


ナコと八起子と言えば、くじよじでと屈指の音楽ユニットでもある。


どんな楽器も自在に弾けるナコと、群を抜いた歌唱力を持つ八起子。


この2人が合わさったので、当然ながら音楽配信をコラボする事が多いのである。


「ああ、流石にリアタイは出来なかったけどアーカイブは見たよ。

2人ともめっちゃ良かった」


「それはありがとうっス。

年末最後のイベントだから気合い入れてたんスよね。

ただ、気合い入れ過ぎたせいで八起子が喉を痛めちゃって。

次の音楽イベントも近いんで、先輩達には申し訳ないんスけど喉を休ませてほしいんすよ」


ナコの言葉に八起子が申し訳なさそうに頭を下げる。


「そうなんだ……あ、良いものがあるよ」


ユウがそう言って大きな袋をゴソゴソと漁り始めた。

 

そして、その中から何かの入った壺を取り出したのである。


「おお、それは囁きの蜜ではないか。

そんなものまで入れておったのか」


「大抵のものは入ってると思うよ。

これ、中に蜜が入っているからちょっと舐めてみて」


ユウに差し出された壺を不安そうに見る八起子であったが、目を合わせたナコが力強く頷いた。


「大丈夫、先輩達を信じるっスよ。

この2人が出すものが悪いものなわけ無いっスから」

 

ナコの言葉に迷いが完全に無くなった八起子。


やはり公私の両面でパートナーであるナコの言葉は誰よりも信頼できるのであろう。


彼女はマスクを外すと、ツボの中の蜜を人差し指で掬い上げてペロリと舐めた。


その瞬間に八起子の目は驚きで見開かれ、そして口からは小さな言葉が漏れ出した。


「そう言えばそのままじゃ飲みにくいよね。

はい、スプーン」


ユウにスプーンを渡されて少しずつ舐めていく八起子。


その度に彼女が反応する声は大きくなっていった。


「どうやら効いているみたいっスね……先輩、ありがとうございました」


「あ〜あー……声がでます!

先輩、本当に助かりました」


すっかり元の調子を取りも出した八起子はナコと共に頼りになる先輩達に挨拶するのでした。

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