#ブラックサンタの東京観光 5
「こうして攫ってきた子供達はサンタの里で引き取らせてもらっています。
就職の希望など本人達の望みを聞きますが、中にはこのようにサンタ業を手伝いたいという子が出ましてね。
この子は優秀なので、現在はサンタの手伝いの最高峰である9頭のトナカイとなっているのですよ」
「優秀だなんて急に褒めるんじゃないよ。
あたしは受けた恩を返したかった……ただ、それだけさね」
そう言って照れながらソッポを向くヴィクセンをユウとマオはニヤニヤとした笑いで見ていた。
「なるほどなるほど、こりゃ優秀なのがよく分かるわい」
「ねぇ、こんなに素直なんだもん」
「ええ、素直で可愛いでしょう。
自慢の娘ですよ」
「あ、あんた達ねぇ!」
3人の揶揄うような視線に耐えられなくなったヴィクセンが声を荒げるが、ふとクネヒトの顔が真剣な物となった。
「いえ、本当にそう思っているんですよ。
今回の東京観光も視察という目的ももちろんあります。
しかし、普段から頑張っている娘にのんびりとか休息を取って欲しかったこと。
そして、貴女の正体を知っても動じない素晴らしい友人を作って欲しかったという目的もあったのです」
クネヒトの言葉でユウとマオは何故自分たちが今回選ばれたのか合点がいった。
サンタのトナカイ役をやっている女性と、その正体を正しく理解した上で友人になれる人物……その点に於いては自分達ほどの適任は無いであろう。
「そういう事なら先に言って欲しかったな」
「知り合いの太鼓判があったとはいえ、実際に会ってみるまでは安心できませんから」
「案外親バカじゃのう」
「可愛い娘を持つと親バカになるものですよ」
「あんた達いい加減にしないか!」
3人の会話に顔を真っ赤にしたヴィクセンが割り込んでくる。
その表情は嬉しいような恥ずかしいような、様々な感情が入り混じっているようであった。
「クネヒトの気持ちはありがたいけどね。
アタシの友人はアタシ自身で見極めて付き合わせてもらうよ」
「それじゃ僕達はお役御免かな?」
「そ、そんな事は言ってないだろ……あ、改めてよろしくって言ってるのさ」
「全く、驚くほどに素直で可愛いのう。
それならこれからは観光ではなく一緒に遊べるスポットに行ってみぬかのう?」
「あ、それいいね。
もちろんクネヒトさんも一緒にさ」
「はいはい、今日は保護者同伴ですからね。
次からは自分で連絡取り合って遊びに来れるようにするんですよ。
貴女は休暇を溜めすぎているのですから」
「い、言われなくっても次からはこっちから連絡するさ」
こうして4人は観光からカラオケやゲームセンターと言ったプレイスポットへと行き先を変え、最後は3人が連絡先を交換して別れたのであった。
モツや石炭、誘拐の話は創作ですがそういう一面があっても面白いですよね。




