ブラックサンタの東京観光 3
「こうしてあちこち案内してもらったけど、やはりこの国には僕のような黒いサンタクロースの出る出番は無いみたいですね」
東京の主だったところを観光し、立ち寄ったカフェでクネヒトはそう告げた。
「完全に無いとは言い切れないんだろうけどね。
それでも人の心の豊かさが段違いだ。
私達が手を打たなくても、この国の人間なら自分たちでなんとかするだろうさ」
「そういうのって今日回っただけで分かるもんなの?」
「サンタの力で幸福度を測るなんて事も出来なくはないですがね。
ただ、街行く人達の幸せ度と治安の良さが他の国とは比べ物になりませんから。
私達の手など要らないでしょう」
「ふむ……その口ぶりからするとお主達が子供に何かをやるのは罰ではなく更生の一環ということかのう?
我々は伝承しか聞かされておらぬから、出来るなら詳しい話を聞かせてもらいたいものじゃな」
マオが受けとったコーヒーを啜りながら尋ねると、ヴィクセンの空気が少し変わった気がする。
「それを聞いてどうするつもりだ?」
「ただの興味本位じゃな。
しかし、後世に伝わっている話が事実と異なるならば真実を知りたくなるものであろう?」
「僕も興味があるかな。
本当に子供を攫っちゃうの?」
「っ!クネヒトはな……」
「いいですいいです、僕は全然構わないですから。
それにこの子達は純粋に知りたいから聞いているのであって、そこに悪意は無いですよ」
クネヒトはユウの言葉に激昂したように立ち上がった、ヴィクセンを手で押さえて椅子に座りなおさせた。
「結論から言うと子供は攫いますし、プレゼントも与えますよ。
石炭と臓物のプレゼントをね」
「その組み合わせには何か意味があるのかの?」
顔は印象が分からないのでどう言う表情をしているか不明だが、恐らくは悪い顔をしているであろうクネヒト。
そんな彼の回答を全く気にも止めずにマオは次の質問を繰り出した。
そんな彼女の様子に「ほらね」と呆れたような両手をあげるパフォーマンスをするクネヒト。
ヴィクセンの方も「頭に血が昇ったあたしが悪かったよ」とぶっきらぼうながらも2人に謝罪をした。
「何のことかよく分からないけど2人の機嫌が戻ったなら良かったね」
「いや、それよりも質問に答えて欲しいのじゃが」
ユウは特に気にした様子もなく、マオは己の知識欲を満たしたい為に続きを促す。
そんな変わった2人に、海外から来た変わった2人組も気分を取り直してマオの質問に答えていくのであった。




