ブラックサンタの東京観光 2
待ち合わせの日、そこに現れたのは黒いスーツを着た男性と茶色いスーツを着た女性の二人組であった。
体型で男性だと分かるのだが、不思議と顔は分からない……認識はしているのだが全く印象に残らない人物。
彼らを見かけた人に似顔絵描きを頼んだら、10人が10人、全く別の顔を描くであろう……そのぐらいに認識出来ないようになっていた。
「やぁ、君達が案内してくれるという子達だね。
面倒をかけて済まないがよろしく頼むよ」
「全く……付き合わされるこっちの身にもなっておくれよ」
「そう言いながらもこうして付き合ってくれるんだから感謝してるよ。
……ああ、紹介が遅れて申し訳なかったね。
僕の名前はクネヒト、いわゆる黒いサンタだよ」
「私の名前はヴィクセンだ。
今日限りの付き合いだろうから特に覚えなくてもいいさ」
そう名乗った2人に答えて、ユウとマオも挨拶を交わして握手をする。
「お二人の訪問を心から歓迎しよう。
黒いサンタのクネヒト殿と、トナカイのヴィクセン殿じゃな」
マオがそう答えると、カッとヴィクセンの瞳が開かれる。
「おいおい、私のことを知ってるのかい?
他のメンバーの名前はどうだ?」
「えーっと、前にマオに習ったことあったよね。
ダッシャー、ダンサー、プランサー、ヴィクセン、コメット、キューピット、ドナー、ブリッチェンに赤鼻のルドルフ加えた9頭だったっけ?」
今度はマオの代わりにユウが答える……が、その解答を聞いたヴィクセンは上機嫌で笑い始めたのだった。
「あっはっはっ、いいね、あんたら……気に入ったよ。
まさか、こんな辺境の土地であたしらの名前を覚えてるのがいるとはね」
「急に上機嫌になったのう」
「トナカイの名前ってあんまり知られていないじゃないですか。
何ならサンタが引くソリのトナカイなんて1〜2頭しか描かれない事もザラですし。
そういうのが気に入らないって不貞腐れてたからちょうど良かったですよ」
「そこ、うるさいよ!
あんたなんて名前どころか黒いサンタクロースの存在すら知られてないじゃないか!!」
「いやいや、そんなことは無いですよ。
最近は私を題材にした漫画があったり、それが実写映画されてたりするんですから、それなりに知られてきた筈です」
こうしてわいわいと騒ぐ2人を連れ、とりあえず彼らの希望すら場所へと案内することになったのであった。




