#日本人の誇るべき共感性　１

「皆の者、こんマオなのじゃ」

・こんマオ

・こんマオです

「今日はちょっと思いついた議題があってのう。

この話の議論を皆と深めていけたらと思い雑談枠を設けたのじゃよ」

・改まってどうしたの？

・話したい議論？

「皆の者は去年起こったアカデミー賞での平手打ち事件を覚えておるかの？」

・あったあった

・あれは強烈に覚えてるよ

「MCが大物俳優の奥さんを弄り、病気までネタにしたことに起こった俳優が壇上に上がって平手打ちをかました事件じゃな。

皆の者はこれについてどう思ったかのう？」

・そんなんやられて当然でしょ

・寧ろ平手打ちでよく済ませたよな

・奥さんのために立ち上がる姿に感動した

「うむうむ、日本人の殆どはこの俳優の行いに対して称賛し、格式高い場で人の嫁をこき下ろす真似をしたMCに非難の声があがったわけじゃな。

一方で海外ではこの事件はどのように見られておるか知ってかのう？」

・海外の方が家族のつながり強いっぽいからもっと賞賛されてるのでは？

・MCが全面的に悪いよな

「日本人はそうじゃろうな。

しかし、実はそう考えるのは日本人だけであり、世界では、暴力に訴えた俳優は最低。

MCはよく我慢した。

あそこで反撃しないのが大人の対応……と、日本人とは逆に俳優の方を非難して、MCの方を持ち上げたんじゃな」

・はぁ！？

・先に喧嘩売ったのはMCでしょ

・ないないない

「うむ、日本人ならばそう考えるのじゃろうが、残念ながら世界の評価とは真逆なんじゃな。

しかし、ここにこそ、日本人が世界に誉められるおもてなしの心の秘密があるのでは無いかと、妾は睨んでおるのじゃ」

・どういう事？

・今の所、日本の方が非難されそうだけど

「うむ、ではこの二つの意見の違いを見てみようでは無いか。

海外では基本的に暴力は最低。

暴力に訴えるのは底辺のする事。

何を言われても暴力は振るうべきでは無かった。

このような意見が殆どなわけじゃな」

・実際に暴力は良くないとは思う

・だからって愛する嫁を馬鹿にされて穏便に済ませられる訳ないよな

「うむ、正にそこなんじゃよ。

日本人だって暴力はダメだという事は分かっておる。

そんな事は誰に言われなくても当然のことじゃからな。

しかし、そこまで考えた上で日本人というものは、もう一つ先へ……つまりは暴力を振るう事になってしまった俳優側の方に気持ちを寄せておるのじゃよ」