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冬に入った日常の一コマ

「服が大変!!」


「本当に勘弁して欲しいのう」


先週までは夏気分であったのに、突如来襲した寒波。


秋をすっ飛ばして一気に冬になった今日この頃……2人は服の整理に追われていた。


「もう夏物全部しまって冬物に変えた方が良くない?」


「いや、しかし予報ではまた気温の戻しがあるかもしれんとか……現に昼間に冬服は暑いからのう」


「はぁ……とりあえずはまだどっちも使えるようにしとくかな」


「それか羽織るもの一つ増やしてカイロに頼るかじゃのう」


面倒そうにしながらも2人は意見を出し合うことを楽しんでいるようにみえた。


実際、ユウとマオは温度に対する耐性を上げれば地球上のどこでも真っ裸で行けるようになるほどに温度変化に強くなる。


だが、そうすると一般の人間との差が出来てしまい、実生活で不自然さが出てしまう事を恐れて耐性を切っているのであった。


こうして、気温の変化に対して服を選ぶという行為自体が2人には経験が少なく、楽しいものへと変わっていたのであった。


「後はニット帽と手袋、マフラーとかの準備はしとこうかな」


「寒さは末端から来るというからのう」


寒さは人間の飛び出している部分、耳や手、首から全体に広がっていくと言われている。


その為の対策は怠らない2人であった。


「さて、服の仕分けはこんなものかのう……今日のご飯はどうするか……」


「面倒くさいし配達頼む?」


「うむ、そうするかのう」


という理由から配達を頼むことになったのだが、ここからがまた迷いの始まりであった。


この店はどうか、あの店はどうか、メニューは何にするのかなどと議論していくうちに更に時間は経過していく。


「結局こんな時間になっちゃったよ。

選択肢が多すぎるってのも考えものだよね」


「まぁ、それだけ豊かな証なのじゃから贅沢な悩みであろうよ」


「オシャレと機能性を両立させるとか、食べる物をどれにするかで悩むとか、元の世界だと絶対に出来ないもんね」


「最早、今から元の世界に帰れと言われても無理じゃよな。

生活水準が違いすぎるのじゃよ」


「壁の中に戻るのもね。

お腹も減らないし寒さや暑さも感じないけど、何も無さすぎて耐えられないよ」


「本当にのう。

せめて配信が行えれば少しはマシかもしれぬがな」


「次元の壁に閉じ込められてみたって企画とか?

……やだなぁ」


「妾だってそんな企画はごめんじゃな」


などと、配達が来るまでの間、過去の辛い話も笑い話に変えながら憩いの時を過ごす2人であった。

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