おせちと初詣
「お年玉も渡し終わったし、みんなでおせちを食べましょうね」
里中はそう言って机の上に重箱を置いていく。
「うわ〜美味しそう。
これ、どうしたの?」
「最近はコンビニでも買えるらしいが何処かで買うたのか?」
「これは実に美しい料理ですね。
女神が食するに相応しい食べ物ですわ」
初めてのおせちに三者三様の反応を見せる。
「ふふ、これは社長の手作りですよ。
本当に上手でビックリしますよね。
私も毎年楽しみにしているんです」
唯はそう言って3人に箸とお皿を配り、目の前にお茶を置いていった。
「まだ沢山あるから遠慮せずに食べてちょうだいね」
「うーん、先ずはこの海老にしよう!」
ユウはおせちの中から海老を見つけて皿に乗せる。
「海老は茹でると腰が曲がって老人みたいになる事から長寿を願う意味があるのよ」
それを見た里中がその意味を説明する。
「ほうほう、これは料理一つ一つに意味が込められておるのかな?
この数の子なんかはどのような意味があるのじゃ?」
「それは子沢山という事で子孫繁栄の意味があるわね」
「中々に面白い文化ですね。
それではこの食べ物はどのような意味があるのでしょうか?」
ルーナが箱から取り出したのはかまぼこである。
「それはかまぼこね。
赤は魔除け、白は清浄を意味していたはずよ」
「なんと!それは女神である私に相応しい食べ物ですね」
ルーナは笑顔でかまぼこを口に運ぶ。
こうして其々の意味を聞きながら楽しく食事会が進んでいった。
「この後は初詣に行こうと思うんだけど3人も一緒にどうかしら?」
里中に誘われてユウとマオは即座に了承する。
しかし、ルーナだけは顔を曇らせ
「せっかくのお誘いですが遠慮しておきますわ」
と答えた。
「あら、忙しかったかしら?」
「いえ、そういうわけではないのですが・・・私、神なのでその神社の神様が見えますし、向こうからも私が認識できるんですよ。
挨拶もしてますからね」
「ああ、それは気まずいわね。
いいわ、初詣は4人で行きましょう!」
納得する里中にユウが首を傾げて尋ねる。
「え?よく分からなかったけど、どういうこと?」
「えーっと、向こうがお仕事で忙しいのに同業者がオフでその場に現れるという状況っていうか・・・例えばユウちゃんが勇者時代にマオちゃんと戦ってたわよね?
その時に知り合いがのんびりその戦いを見学に来たらどう思う?」
ユウは暫くその様子を想像して考える。
その顔は段々と険しくなっていった。
「邪魔だから早く帰ってほしいかな?
冷やかしなら他所でやってほしい」
「そういう事なのよ。
この時期忙しい神様の所にオフの神様が顔を合わせるなんてこれ以上ないほどに気まずいでしょ?
だからルーナちゃんには留守番を任せましょう!
お願いしてもいいかしら?」
「ええ、ここは私に任せて存分に楽しんできてくださいな」
こうして里中と唯、ユウとマオの4人は近くの神社に初詣に向かうのであった。




