ネコリの里帰り 13
「貴女にしては珍しく力を貸していたじゃないですか」
神の国の一角でルーナが語りかけていたのは、巫女の神社に住む土地神であった。
「前も話したが、あやつは我の巫女じゃからな。
後継も用意せずに死なれては困るのよ」
「あの人にあれだけの運転技術はありませんからね。
それなのに毎回振ったダイスでクリティカルを出す事など普通は不可能でしょう」
「……なんの話しか分からぬが、確かに奴の運転を全て成功に書き換えた。
じゃが、我がやったのはその程度よ。
今まで大した加護を与えておらんかった帳尻を合わせただけじゃ。
文句を言われる筋合いは無かろう」
「ええ、もちろん文句などありませんよ。
元々、超常的な加護など欲しがらない人ですからね。
ピンチの時には存分に手助けしてあげてください」
「言われんでもそのつもりじゃ」
場面は変わってセシムとネコリは雪道の上を歩いていた。
彼女達が向かうのはこの冬からオープン予定の宿泊施設であり、元はネコリの故郷である。
この地では宿泊施設となる旅館だけは普通の建築物が用いられて既に建築が終わっている。
それ以外の建物は、本格的にシーズンが始まる前に雪女達が氷の建築物を用いる予定である。
「まだ雪は見えないけど、冬になったら凄いんだよね?」
「そうだね……最も、私は常に雪に閉ざされた故郷しか見てないんだけど」
かつて里町に化けていた宝珠によって雪女の里はネコリを残して深い雪の結界に閉ざされていた。
その中で長い時を過ごしたネコリにとって、雪に覆われていない山を見るのは初めての感覚だったのである。
自分の知らない山の姿に少し物憂げになるネコリの手を取るセシム。
「それじゃ、今日はお互いに初めてこんなに良い光景を見られてるんだ。
なんだか嬉しくなってきちゃった」
「そっか……そうだね。
私が知らない光景でもセシムと一緒なら嬉しいって気持ちになるよ」
そうして2人は手を繋ぎながら山道を歩いていく。
「今回の里帰りさ……こんなに大変になるなんて思わなかった。
トラブルだらけで、不思議な事件もいっぱい起きて……今まで普通の生活しかしてなかったから、こんな世界があるなんて知らなかった」
「セシム……巻き込んでごめ……」
謝ろうとしたネコリの唇に人差し指を当てた言葉を止めるセシム。
「でもね、こうして一緒にネコリの故郷が見れて良かった。
いま、本当に嬉しくて幸せだよ」
「セシム……ありがとう。
私も一緒にここに来れて幸せだよ」
こうしてたどり着いた雪女の里でネコリの案内で中を見回っていく2人。
その姿からは、この冬の管理が上手くいく予感を漂わせていたのであった。
巫女さんの運転がクリティカル出し続けていた理由はこれでした。
特別優れていたわけではなく、某TRPGな運転技能40ぐらいです。
ネコリ達はこの後に遭難者を見つける話に繋がります。




