ネコリの里帰り 12
「あの人、あのままにしておいて良かったんですか?」
山の上のホテルへと繋がる道の途中、今度は安全運転を心がけている巫女に対してセシムが尋ねる。
「後で退魔士協会の人間が回収していくので大丈夫ですよ。
その後は術をキッチリ封印された上で警察送りですね。
殺人、誘拐、人身売買……まぁ、まともに出てこれるようになるまで二桁はかかるんじゃないですかね?」
「その……出てきてから復讐に走るという事は無いのだろうか?」
「まず間違いなく霊力を吸収する仕掛けになっている牢に入れられる事でしょう。
霊能者として修行が出来ない環境で霊力を搾られる日々。
一年もすれば霊力なんて全く無くなっていますから、ネコリさん達雪女に勝てる道理が一切なくなりますね」
「それなら良かった」
巫女の言葉を聞いて心底安心して息を吐くネコリ。
セシムはそんなネコリの肩に優しく手を添えた。
「マオさんの方はどうなっています?」
巫女が運転しながら助手席に乗り込んだユウに尋ねる。
「どうやら烏合の衆だったみたいだね。
全員捕縛済みでこちらに向かってきているみたい」
「それならホテルで合流ですね」
こうして車を走らせてスキー場併設のホテルへと辿り着く。
駐車場に車を停めると、直ぐにホテルの中から見覚えのある人物達が現れる。
「ネコリ、無事だったのね!」
「退魔士の皆様、ご無事で何よりです」
その人物はネコリの姉と以前に依頼を出した支配人であった。
「お姉様!」
「ご無沙汰しております。
心配をおかけしましたが、無事に賊どもは討伐しました」
「それはそれは……今回も本当にありがとうございます」
巫女は万一のことを考えてホテル側に連絡を入れていたのだが、無事に解決したことで心配は杞憂となったようである。
「いえ……今回の騒動は私達の恥のようなものでして……こちらこそ、ご迷惑をおかけして申し訳ありません」
深々と頭を下げる巫女であったが、ホテルの支配人はそれを否定するように首を振る。
「いえ……なんと言われようと貴方達は私達の恩人です。
さ、ここでは何ですから中へどうぞ」
支配人に案内される巫女とユウについて、ネコリの姉とネコリ、セシムのコンビが後を追う。
「ねぇ、貴女が妹の良い人なのかしら?」
「え、あ、その……はい」
突然の質問に動揺しながらも素直に答えるセシム。
「お、お姉様!」
「ふふ、2人の馴れ初めからたっぷり聞かせてもらうわね。
私以外にも皆楽しみにしてるから」
こうして、後から合流したマオも加えて一行は歓待されるのであった。
その晩は雪女達の質問責めにクタクタになるまで付き合うネコリとセシムであった。
意外と長くなってしまいましたがもう少しだけお付き合い頂けると幸いです。




