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ネコリの里帰り 10

「だあああああああ!!

何なんですか、あの人達は!!」


巫女が普段の冷静な姿とは程遠い雄叫びを上げながらハンドルを切る。


狭い峠道のカーブを神技のような運転テクで駆け抜けていくのだが、その後ろを追うように一台の車が追いかけていた。


「ひいいいいい!!」


危険極まりない運転に悲鳴をあげるセシム。


その一方でネコリは冷静に後方から迫る車を観察していた。


「あの車、どう見ても挙動がおかしい。

本来曲がれない筈なのに強引に向きが変わってる」


「乗っているのが逸れの退魔士だとして、何らかの術を使っているのかもしれませんね」


直線に入ってミラーで車を確認する巫女。


「巫女さん、まえまえまえ!!」


「分かっていますよ!」


次のカーブが迫り勢いよくハンドルを切る巫女。


「ネコリ!雪女パワーで何とかならない!?」


「さっきから路面を凍らせるように動いてるけど駄目……多分、あの車の変な力のせい」


「逸れと思って完全に油断していましたね。

まさかそこまで力のある人間が手を貸しているとは」


「何か対策は無いんですか!?」


「……スリルのあるドライブを続けましょうか」


(このままで本当に良いの?

多分、あいつの狙いは私達雪女……なら!)


そう心の中で考えていたネコリの手に温かいものが触れる。


「駄目だよ、ネコリ。

貴女だけを犠牲にして生き残ったって何の意味も無いんだから」


「でも、このままじゃ……」


「大丈夫ですよ」


不安そうな声を上げるネコリに自信満々の声でそう言う巫女。


「誰に援軍を頼んだと思っているんですか。

時間さえ稼げば絶対に彼女達が……あっ」


会話で集中力を持っていかれたのか、それともここまでの疲れが出てしまったのか分からない。


巫女はハンドルの操作を誤ってしまった……それも何故かガードレールが無いポイントで。


まるでアクション映画のように崖からジャンプする巫女の車。


その浮遊感は一瞬であり、直後に真っ逆さまに崖下へと落ち始める。


『うわあああああああああ!!』


3人の悲鳴が重なって真下に落下して……いかなかった。


車は何かの力で宙吊りになった状態で空に浮かんでいた。


「全く……ギリギリ間に合ったから良かったけど、少しでも遅れてたらアウトだったじゃん」

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