ネコリの里帰り 9
「全く……ただ観光するつもりじゃったのに厄介なことになったわい」
当初の予定を変えて福岡空港から熊本空港へと降り立ったユウとマオ。
「昨日いきなり駆り出されるレベルで切迫詰まってたから仕方ないんだけどね」
「さっさとそのアホどもを捕まえて温泉でも満喫したいものじゃ」
珍しく憤慨している今のマオの姿が大人の状態である辺りに、彼女の本気度が窺えるというものであろう。
「その状態なら霊力の探知も出来るんだよね?」
「うむ、本気の妾ならば造作もない事よ。
どれ……」
そうして空港の待合室の座席に座って目を閉じて集中する。
暫くして目を開いたマオの表情には少し焦りが見えた。
「どうかしたの?」
「不味いのう。
奴らが集まるには少し時間がかかるという話であったが、既に集結して山に向かっておるようじゃ。
更にその中でも力の強い者たちが先行しておるようなのじゃが……ネコリを追いかけているような動きをしておる。
恐らくじゃが、追いかけられておるのではないか?」
「え?なんでそんな事に……話が違うじゃん」
「恐らく昨日捕まえたあの老人は巫女先輩……退魔士協会の動きを欺くための捨て石だったのではないか?
見るからに役に立たなそうであったし」
「仲間を捨石にするような連中か。
それならのんびりしている暇は無いね」
「うむ、妾は探知が出来る大人数の方を追う。
ネコリ達は巫女先輩の車で移動してあるじゃろうから道路沿いを移動しておれば時期に追いつくであろう。
そちらはユウに任せるぞ」
「りょーかい、早速行ってくるね」
空港を出たユウは以前に身につけた、手から魔力の糸を出して某アメコミヒーローのように移動するという手法で、あっという間に見えない場所まで移動していった。
「次は妾の番じゃな。
久しぶりに使う魔法じゃが果たして上手くいくやら」
そう言いながら自身の姿を黒いカラスへと変化させていくマオ。
そのまま空へと瞬いていったのだが、そのスピードはとても普通のカラスとは言えないような速さであった。
自身の翼ではなく、魔力によって飛行の力を得ている為にできる芸当である。
(巫女先輩達が心配ではあるが……今は妾の出来ることをしなければな)
こうして熊本に着いた早々に2人は予定外に別行動となるのであった。




